子どもたちの未来に、たくさんの選択肢を

特定非営利活動法人 NPOカタリバ 代表理事 今村久美

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大槌臨学舎でマイ・プロジェクトに取り組む吉田くん

忘れられた石碑の教訓
 
 第1回に登場した吉田くんもまた、マイ・プロジェクトに取り組むひとりだ。彼は、明治三陸津波の被害を伝える石碑を、震災の後になって知った。そこには当時の死者数が、さらには「ここに家を建ててはいけない」「ここより下は、津波が来たら高台に逃げろ」という警告が書き記されていた。後悔の念が募ったと彼は言う。
 
「この石碑を読んでいれば、読んで多くの人に広めてみんなが防災意識を共有していれば、もっと多くの人が助かったんじゃないかって。僕は、震災を生き延びた大槌の人間として、後世になにか伝えたい。それは明治三陸津波のときに石碑を建てた人たちの思いと、きっと同じだと思うんです」
 
 彼が着目したのは、なぜか「木」碑。丈夫そうな石ではなく、木こそ望ましいと語る彼の論理は明快だ。
 
「石碑だと、そのうち風景の一部になって、誰も気に留めなくなってしまう。それが、忘れ去られてしまった石碑の教訓。だから、木がいいと思いました。木だったらどうしても腐るし、字もかすれていくから、手入れが必要だし、何年かごとに交換もしなければいけない。そのときに震災の記憶を振り返ることで、この津波の教訓を後世に繋いでいけると思ました」

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