政策提言 『再エネでローカル経済を活性化させる』
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地域貢献型再エネ事業のすすめ―
2012年7月の「再生可能エネルギー特措法」(FIT)施行から、メガソーラーを中心に再エネ発電設備の導入量が急増しました。国全体では、エネルギー安全保障の観点、化石燃料への過度の依存からの脱却等、電力源の多様化が進みました。一方、期待される地域の住民、事業者を主体とする再エネ事業は、銀行借入れ等のファイナンスがままならない等、事業化を断念するケースも見られます。地方創生の観点では、課題が少なくありません。
こうした問題意識に基づいて、政策シンクタンクPHP総研は「地域貢献型再エネ研究会」を立ち上げ、検討を重ねてまいりました。本提言報告書は同研究会の成果をまとめたものです。本研究プロジェクトの推進にあたっては、技術、行政、法律、経済等に精通する専門家に加わっていただき、地域貢献型再エネ事業のあり方を総合的に検討しました。
本提言が、より多くの自治体や事業者の発電事業に活かされ、地方創生を考える際の参考にしていただければ幸いです。
PHP「地域貢献型再エネ研究会」メンバー(50音順、敬称略)
- 荒田英知
- (政策シンクタンクPHP総研主席研究員)
- 江口智子
- (弁護士/東京駿河台法律事務所)
- 大坪祐紀
- (国土交通省)
- 大和田野芳郎
- (国立研究開発法人産業技術総合研究所 名誉リサーチャー)
- 佐々木陽一
- (政策シンクタンクPHP総研主任研究員) ※取りまとめ責任者
- 田中信一郎
- ([一社]地域政策デザインオフィス代表理事)
- 深尾昌峰
- (龍谷大学政策学部准教授/株式会社PLUS SOCIAL代表取締役)
- 福島健史
- (弁護士/早稲田リーガルコモンズ法律事務所)
- 水上貴央
- (弁護士/[NPO]再エネ事業を支援する法律実務の会 理事長)
- 皆川聡一朗
- (政策シンクタンクPHP総研)
- 山下英俊
- (一橋大学大学院経済学研究科准教授)
【内容】
<目次>
はじめに ~再エネを巡る潮目が変わり始めた~
第1章 なぜ、今、再エネか?
- 1.エネルギー・環境両面から意欲的な導入が必須
- 2.FITに依存しない長期安定発電の体制構築は緒についたばかり
- 3.利益の域外流失とトラブルの是正
- 4.世界的な連携と投資促進で見込まれる市場拡大
第2章 再エネの推進と地方創生の視点
- 1.再エネで目指す地域の姿
- 2.再エネには地域貢献が本来的に望まれている
- 3.公的支援の差別化により事業者を地域貢献型へ誘導する
- 4.公的支援に必要な3つの承認
- 5.基礎的要件と積極的支援の設定方針
第3章 提言 『再エネでローカル経済を活性化させる~地域貢献型再エネ事業のすすめ~』
提言1 自治体が中心となって地域の為になる再エネ事業を選択的に支援する枠組みを構築すべき
- 【提言1-1】地域貢献型の「基礎的要件」を共有する
- 【提言1-2】対象事業の信用力強化を支援の中核に置く
提言2 再エネ事業者がより実効的な地域貢献を行うよう政策誘導を図るべき
- 【提言2-1】規制と支援の両輪を規定した政策条例の制定
- 【提言2-2】地域内事業発注を増やすための調達ルール
- 【提言2-3】域内外の事業者と市民による協働事業の枠組み構築
提言3 再エネ事業者と地域がともに発展できる貢献手法を開発すべき
- 【提言3-1】地域協議会と連動した寄付型モデルの浸透
- 【提言3-2】地域事業兼業モデルの実現
- 【提言3-3】信託を活用した持続可能な地域貢献の枠組みづくり
- 【提言3-4】市民ファンド+地域ファイナンスへの展開
第4章 現場から見た再エネ政策の中長期的課題
1.期待される「稼ぎ役」と「貢献役」としての再エネ
2.求められる再エネの骨太改革
- 【1】買取価格の多様化(細分化)
- 【2】税制改革
- 【3】地域電力会社との連携
- 【4】新たな社会的投資フレームの開発
- 【5】既存の支援制度等のさらなる活用
- 【6】ローカル・マネジメント(LM)法人の活用と地域貢献可能なガバナンスの構築
- 【7】地方創生信託機構を創設し、事業者の資金調達を円滑化