バブル崩壊以降の政治・行財政改革を解剖する

曽根泰教(慶應義塾大学大学院教授)×中里透(上智大学准教授)×永久寿夫(PHP総研代表)

_MG_0402

2.リフレ派と増税派の両極端で真ん中の議論がない
 
永久 曽根さんは報告書の序章で、日本とイギリスの累積債務の話をされていて、対GDP比200%というのは、これまでは戦時の時にしかない、現在の日本は戦時と同じだ、と書かれていました。なぜそのような状況が続いているのか。どうやって収束させていくのか、出口が全然見えませんね。
 
曽根 まさしく、日本はいま戦争をしていて、それを賄うために戦時国債を発行しているようなものです。具体的に何に使っているかといえば、主に社会保障費です。だから、敵は誰かと探していくと、自分ということになってしまいますね。その自覚をもつことが、この戦争を終わらせるカギだと思うんです。
 
永久 中里さん、これから累積債務はどこまで大きくなって、社会はどうなるのでしょうか。
 
中里 財政に対する見方は二分しています。「敵」はデフレであって、金融緩和の足を引っ張らないように消費増税の実施は慎重にすべき、というリフレ派と呼ばれるグループがある一方で、「敵」は社会保障費の肥大化で、増税しないともう立ち行かないというグループもあります。それぞれの立場によって将来の財政収支の予想も異なっています。問題は、議論が両極端になってしまい、真ん中の議論がなくなっていることだと思います。
 将来の予測はなかなか難しいですが、急にデフォルトが起きることはないと思います。ただこのままだと、為替が円安の方向に振れて、輸入物価の上昇を通じて物価が高騰し、生活が苦しくなるといったことは起こるかもしれません。それはある意味では、インフレという形の税負担で財政を支えていくということになります。
 果たしてそういう姿がよいのか、あるいは、消費税の増税などの通常の措置で財政を改善させていくほうがよいのか。そこのところの議論がなかなか収束しないまま、両極端の議論が続いています。
 

関連記事