バブル崩壊以降の政治・行財政改革を解剖する

曽根泰教(慶應義塾大学大学院教授)×中里透(上智大学准教授)×永久寿夫(PHP総研代表)

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6.赤字国債はいつまで発行できるのか
 
永久 借金が増えるから、それを返すために消費税を上げて、それで景気が悪くなるとまた財政を使い、それで借金を増やすといった負のスパイラルになっているような気もしますが、それが可能なのは国債を発行して、それを日銀が買っている状況があるからですよね。それはいつまで続けられるのでしょうか。
 
中里 「わかりません」と答えるのが一番的確だと思いますが(笑)、当面は大きく問題が生じることはないと思います。別の言い方をすると、マネタリーベースを大幅に増やしてもマネーストックがなかなか増えなくて、しかも、物価も上がらない。その状態であれば、現在の非常に大きなバランスシートを抱えた中央銀行と、非常に大きな債務を抱えた政府のもとでも経済と財政はうまく回っていくということになります。
 ただ、物価が実際に上がり始めて、金利が上がっていく局面になると、財政にも利払費やその他の負担が生じるし、日本銀行についても超過準備に対する付利のコストが生じて、財務の点で問題が生じる可能性もあります。そこをどう考えていくかということになります。
 
曽根 増税派とリフレ派の双方に欠陥があるんですよ。増税によって国民にいいことがあるかと言えば、その分は借金の返済に回るだけです。社会保障の充実だとか何か新しい手当てをするためには、また借金をせざるを得なくなる。これは増税派の議論の問題です。リフレ派のほうは、物価が上がると駆け込み需要のようなかたちで消費が増えると言うけれど、消費が旺盛になるためには、賃金が増えなければいけない。では、賃金を上げるためにどうするかというと、企業に「上げろ」と言う意外に手立てがないし、実際にはなかなか上がらない。両方とも行き詰っていますね。
 
永久 「今のようなやり方を、とりあえずは続けているけれど、ずっと続けられる保証はない、これではまずいよね」という認識はみんな無意識に持っているのではないかと思います。それを改めて明らかにして、だから、国の「経営モデル」を変えなければいけないし、いまその転換期にあるのではないか、という問題意識の提示が今回の報告書の結論ですね。
 同じような問題意識は、「日本再編計画」を出した時にもあって、その解決策が道州制でした。でも道州制ができなかったどころか、地方分権も「お金も自由もください」みたいなところで留まっている。大騒ぎしたけれど、結局、国の経営モデルは変わっていない。今後はどうしたらよいのか、科学技術などの進歩を考えたら、新たな、しかもこれなら実現できるという方法もあるのではないかと思いますけれど、どうお考えですか。
 

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