バブル崩壊以降の政治・行財政改革を解剖する
3.払拭しきれない政治への不信感
永久 実際、松下幸之助が警鐘を鳴らしてもう何十年も経っていますが、急に何かは起こらないだろうからということで、ずっとこういう状態を続けている。ですが、この状況を未来永劫続けられるわけではないという点では認識は共有されているようにも思われます。
世論調査をみると、国民も財政は解決しなければいけない重要課題だと認識している。けれど、具体的に消費税を上げるとか、社会保障のレベルを下げるとなると否定的になってしまう。極めて自然な反応と言えばそうなのですが、これではなかなか状況は変わりませんね。
曽根 まずは、日本の財政状況をきっちり説明する必要がありますよね。累積債務はこれだけあるけれど、対外資産も外貨準備高も潤沢だし、簡単にはデフォルトしないですよ、だけど将来的にはこういうリスクがあります、ということを分かりやすく示さなければならない。それを行ったうえで、社会保障制度の転換や増税のメリットとデメリットを示して、選挙をする。それがなくて、選挙の時に社会保障費を削減するとか増税すると言ったら、その政党は負けてしまいます。
いや、そうした説明があったとしても、政治家の立場に立てば、負担をお願いする政策を示すのは恐いですね。ノーを突きつけられる恐怖感がある。だからきついことは言えなくて、重要なことなのに先送りしていくという、悪循環が起きています。
この循環を逆に回転させるにはどうしたらいいのか。選挙の時に堂々と負担のことを訴える人こそ信用できる、そういう人じゃないと、そういう政党じゃないと政権を任せられない、というふうに国民が思ってくれるためにはどうすべきかが課題ですね。
永久 そうですね。いわゆるマニフェスト選挙が2000年代前半から始まりました。政権を取った政党のマニフェストを見ると「財政再建」ってみんな書いてあるんですよね。さらに細かいところを見ると、消費税増税何%みたいなことも書いてあるものもあります。選挙に勝ったら、一応それが裏書きされたということですが、実際としてはなかなか実行できない。なぜそうなるのか、政治的な理由のほかに、政策的な問題があるとも思われますが、いかがですか。
中里 財政が非常に厳しいということ、また、財政再建を行う際には歳出削減、増税、経済成長による増収という三つのツールがあって、それぞれを使うことが大事ということも主要政党の中で共有されていると思います。ただ、財政再建の具体的な進め方については、いろんな意見があるでしょう。
恐らくマニフェストを忠実に実現したのは小泉総理なのではないかと思います。「構造改革なくして成長なし」と言って歳出をカットしていったわけですが、きちんと筋が通っていて論理的に将来の姿が描ければ、国民は自分に少し痛みを伴うものであっても賛成してくれるところはあるのだと思います。
消費税については、自分の負担が増えるから増税に反対というのもあるけれど、政治が本来やるべきことをきちんとやってないという不信感があって、そのことが増税になかなか理解が得られない原因になっているのではないかという印象を受けますね。