バブル崩壊以降の政治・行財政改革を解剖する

曽根泰教(慶應義塾大学大学院教授)×中里透(上智大学准教授)×永久寿夫(PHP総研代表)

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7.新しい国の経営ビジョンとモデルの構築が必要
 
曽根 そう考えた時にヒントになるのが、地方分権論とコンピュータのネットワークの進展が対応してきたことです。つまり、中央管理型から自律・分散型に。それで現在、コンピュータの方はクラウド型になっているのだけれども、政治や行政の方にはそうした議論はまだほとんど生まれていませんね。国の「経営モデル」にもクラウドコンピューテンィグに相当するものを考え出したらいいいと思います。文書処理とか行政処理などはすぐにでもできそうですよね。
 
中里 「機能の共有化」ということですよね。
 
永久 マイナンバーとか住基ネットなどは、発想としてはそれに近いものがありますが、期待通りの成果を上げているようには思えませんね。 
 
曽根 エストニアやシンガポールあたりだといきなりできるのは、国が小さいからということでしょうか。日本は、システム転換しようとすると、いろんなところから抵抗が出てきますね。
 
中里 中央集権とよくいいますが、「霞が関」、つまり中央省庁自体はむしろ過度に分権化されていて、お互いの棲み分けができている。ある部局が他の部局の所掌に係るようなことをやろうとすると、その部局が抵抗するというようなことがあるわけです。一方、権限を渡されてもなかなか自立して自分の意思で動けない自治体もあるわけで、この関係をうまく整理していかないといけませんね。
 
永久 縦割りの分権になっている中央官庁に横串を刺すという目的でできたのが内閣府であり、また官邸主導ですが、ただ大きな組織が一つ増えただけとか、官邸は興味のあることしかやらないとか、さまざまな批判もありますね。
 
中里 それからもう一つ、日本は格差に対して非常に敏感です。分権化は地方自治体の行財政運営の規制緩和ですから、分権で多少の格差が出ても、それはやむを得ません。このことをきちんと受け入れられないと、分権というのは絵にかいた餅になってしまうんですね。
 
曽根 日本は老人になっているんですよ。だから、「がん」を見つけて、それを治すためにどうするかという議論よりも、老人である日本をどうするか、そういう議論が必要ですね。
 一つは、70歳までしか生きないと思っていたら、100歳まで生きる。この30年分をどうするかというモデルはまだできていないんですよ。
 
永久 いや、今やっていることがそんな感じですよね。抗がん剤を打ちながら、頑張っているような。そうではなくて、何か新しい形になって生き返るというか、国自体のトランスフォーメーションというか、そういう発想で取り組むべき時なのだろうと思いますけどね。
 
曽根 たしかに、そうかもしれない。今まで100歳まで生きる国はなかったんですよ。その間に戦争や革命とかいろんなものがあって、国が変容していくわけです。ただ、それを自発的にやっていくには同じように大きなエネルギーがいるわけです。
 
永久 次のプロジェクトでは処方箋を検討することにして、その実現に向けて、どこかの自治体や企業やNPOなどと一緒になって、「やってみる」というところまで進むことも視野に入れたいと思います。今日はありがとうございました。
 
 

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