現実の姿に即してさらなる発展の方向性を考える
折木良一氏(元統合幕僚長)
2.NSCはどのように動いているのか
金子 NSC本体は、四大臣会合、九大臣会合、緊急事態大臣会合という3つの会議体で構成されています。九大臣会合の機能はほぼ前の安保会議と同じですし、重要緊急事態に際して政治的な判断を審議する緊急事態大臣会合はまだ一度も開催されたことがありません。
外交、防衛を統合する機能を果たしているのは四大臣会合です。政治家にきいても、事務方に聞いても、四大臣会合は、政治のリーダーシップが発揮されているようですね。特に現政権では安倍首相が議論を牽引しているとのことです。
大臣会合本体に加えて、局長級の幹事会をはじめとする事務レベルでの調整メカニズムが構築されたことも画期的です。イギリスでヒアリングしたところでもNSC(O)と呼ばれる事務レベルの調整メカニズムの役割が大きいとのことでした。内閣官房にNSCを支える事務局たる国家安保局を置き、関係省庁を調整するメカニズムをしっかりつくったことが成功の要因のひとつでしょう。
折木 やはり、NSCを支えるNSSが非常に大事です。これから政権交代があったりしても、そこがカギになる組織としてうまく機能するように持っていかないと、形骸化してしまうおそれがあります。
金子 小泉政権の時も経済財政諮問会議が比較的機能していましたが、政権交代後は経済財政諮問会議もやめてしまえということで、別の枠組みでやることにしましたが、それがうまくいったとは言えません。安保政策の中身については安倍政権と違う考え方の政権がでてくることも当然ありうるわけですが、国家安全保障の方針を決めていく枠組みとしては、NSC以上にうまくいくものは考えにくいと思うんです。ですから、ここはうまく使ってもらうことを、政治家によく考えてもらう必要がある。
折木 当然ながら、政権が代われば、政策も変わってくると思いますが、安全保障政策の基本的な部分は、継続性というか、一貫性をもって、ずっとやっていかなければいけない話で、そこはしっかりした人材がこうした枠組みを担っていくのが大事でしょう。
金子 今回レビューして、ある意味で予想以上だったのは、中国とか韓国に関してはある程度報道でも出ていますが、谷内局長が米国のスーザン・ライス国家安全保障問題担当大統領補佐官をはじめ随分他国のカウンターパートとやりとりしているということです。
これまでは、その側面が抜けているか、部分的に官房長官なり外務次官なりがやっていたということでしょうから、その点だけでも相当日本の外交力、対外的なパワーが強まったといえます。
折木 韓国、中国あたりとの関係が少しプラスの方向に動いてきた背景にも、やはりそういう関係を築いて、カウンターパート同士で話したということもあるのかもしれませんね。
ただし、谷内局長さんはじめ今のNSSの幹部だからうまくいっているということもあるでしょうが、あまり属人的になってしまうのはよくないでしょう。
金子 やはり総理に近いということで、相手国から見た時にこの人が話し相手になるというところはあるんでしょうね。国家安全保障局長の役割は、総理と局長との関係で大分変わってくると思いますが、カウンターパートとやりとりする役割は不可欠でしょう。