現実の姿に即してさらなる発展の方向性を考える

折木良一(元統合幕僚長)×金子将史(政策シンクタンクPHP総研首席研究員)

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4.インテリジェンス機能をどうするか
 
金子 アジェンダとしてもっと取り上げていくべき、という分野はありますか。
 
折木 アジェンダそのものというよりまた情報の話になりますが、テーマを出して、政策と情報をマッチングさせるような会議をやってもらうことが大事で、その根っこはやはり情報だと思います。中東にしろ、中国にしろ、どこでもいいですが、相手の立場になった分析を基本にして本当にやっているのかなという疑問があります。だから、会議のやり方やアジェンダの決め方もこれから少し考えていただかなければいけないのかもしれません。わかりませんが。
 
金子 今の政権は力がありますので、地球儀俯瞰外交を進めていく方向で勢いよく進んでいます。今までできていなかったのでやらなければいけなかったところがあるわけですが、こうして日本の存在感が高まってくるというか、復活してみると、他国からも当然警戒されてくる。そういう意味でも、相手から見た視点を踏まえていくことがより重要になってくる面があるかもしれないですね。
 
折木 今の情報機関なりNSSでやるには物理的に限界があるのかもしれないので、そこはやはりシンクタンクが必要と思います。そこに人材なり、知識なり、情報なりをため込んでいかないと、官だけではちょっと厳しいのかなという気がするのですよね。
 
金子 広い意味でのインテリジェンスというか、まさに知性としてのインテリジェンスが必要だということですね。
 狭い意味でのインテリジェンスでいうと、防衛省にしても、外務省にしても、機微なところも含めて、相当程度NSC、NSSに提供して共有するということになってきて、それは本当に大きな変化だったと思います。ただし、今おっしゃったような中長期的な観点も含めてのアセスメントのところはまだ弱い。そこは本来、NSSの仕事ではなく、情報部門の仕事だということになっているわけですが、その面の強化は次の課題ではありますね。
 
折木 そうですね。おっしゃるとおり、NSC、NSSの問題でなくて、情報組織の話だと思いますが。
 
金子 狭い意味でのインテリジェンスでいうと、それこそヒュミント(人的情報源を介した諜報活動)をやらなければいけないとか、いろいろな議論があります。特にこの分野が必要ではないかというお考えはありますか。
 
折木 地域的な部分と機能的な部分があって、例えば情報本部でも地域についての担当があるのですが、やはり不十分という気がします。一つには地域専門家がもっと必要だということです。
 機能の方では、サイバーとか宇宙とか出てくるのですが、そちら側が情報とものすごく密接になっている。そういうところの専門家が必要でしょう。
 
金子 収集方法でいうと、アメリカの大統領への情報ブリーフィングでも、6割ぐらいがシギント(信号・通信の傍受による諜報活動)関連とも言われています。日本では、ヒュミントの必要性がよく指摘されるわけですが、ヒュミントは失敗すると大やけどをする。そういう意味でも、もう少しシギントをどうするかを考える必要があるのではないか。これはサイバー防衛にも密接に結びついてくるところでもあります。スノーデン事件もあり、プライバシーや市民の権利との関係は非常に難しいところではありますが、インテリジェンス強化を考えるのだったら、サイバーも含めてのシギントというというのは避けて通れないかなと思っています。
 
折木 日本と違って、イギリスとかフランスとか、多分中国もそうかもしれませんが、インテリジェンスに国の存亡がかかっているという姿勢ですよね。日本でもそういうスタンスで、どうあるべきかを情報部門がしっかり考えてもらいたいなという気がします。
 

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