強い意志をもった楽観論で未来を切り拓け

牛尾治朗(ウシオ電機株式会社代表取締役会長)×永久寿夫(PHP総研研究主幹)

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6.軽武装経済重点主義を貫け
 
永久 ところで、安倍政権は、武器輸出三原則の変更や集団的自衛権の解釈の変更をし、これからは憲法9条の改正にも取り組むのだろうと思われていますが、こうした動きをどう評価しますか。
 
牛尾 日本の保守本流は、吉田茂以来、軽武装経済重点主義です。日本の教養ある指導者の8割はこれを支持していると思う。ただ、インターネットなどもそうですが、先端技術などの半分は防衛産業の中から生まれてくるわけで、防衛産業を国際的に展開できないと科学技術や産業の面で世界から取り残される。さらに軽武装といっても、周辺のレベルからみると、まったく役に立たないものになる恐れがある。これでは専守防衛は成り立たちません。
 
永久 安倍政権の方向は、軽武装経済重点主義の観点からも、理にかなっているということですね。
 
牛尾 外交的に影響力が大きいのは、金銭的な経済協力です。だから、ODAを減らすのは間違いで、福祉予算を2割下げても、例えばエチオピアの老人を大事にするという精神を忘れてはいけませんね。
 
永久 それは日本の仲間というか、サポーターを増やす、維持するという、そういう意味ですか。
 
牛尾 そうです。これまでの努力によって、日本に対する評価は高くなりました。だから、米タイム誌の「国家イメージランキング」でも英BBCの「世界に良い影響を与えている国」でも、日本は世界1位になっているじゃないですか。それが日本の外交力を高め、繁栄を継続させる力になるわけです。
 
永久 国際環境の変化によって、日本の外交・安保政策は変わるべきだと思うのですが、アメリカはオバマ政権の中で何やら方向性が見えなくなってきた部分があり、その一方で中国が相当力を強めてきて日本との摩擦を大きくしている。軽武装経済重点主義を維持すべきとしても、現実的に維持していけるのでしょうか。集団的自衛権はどうとらえますか。
 
牛尾 軽武装経済重点主義を実現するために、アメリカが日本を一方的に守るという日米安保条約が画期的な役割を果たしてきたわけです。条約締結当時の日本の経済力を見ると、GDPは世界の0.3%、一方でアメリカは40%を占めていた。だから、それでアメリカも了解した。それが、ある時期に、日本が15%になり、アメリカが25%になる。いまは日本が8%ぐらいで、アメリカが25%ぐらいですかね。そうなると、一方的に守ってもらうというのは、アメリカの国民感情を考えても、できないでしょう。やはり、アメリカが攻められた時には、ある程度でも日本もアメリカを守らないといけない。そうしないと日本は守ってもらえないかもしれない。つまり、日本が軽武装主義を維持できなくなる恐れがある。
 
永久 そうしたことを考えずに、ただ防衛力を削減しろという昔の非武装中立論みたいな議論がありますし、逆に憲法9条を改正して重武装自主独立みたいな議論もありますね。
 
牛尾 これだけ大きな国を武力なしに平和に保つのは無理でしょう。といって、自主独立でいくんだというのも間違い。アメリカは日本が核兵器を持つことを一番恐れている。やはり、日米同盟を主軸にした軽武装を、まぁこれからあと50年は続けるべきです。

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