強い意志をもった楽観論で未来を切り拓け

牛尾治朗(ウシオ電機株式会社代表取締役会長)×永久寿夫(PHP総研研究主幹)

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4.故郷に帰って起業すべし
 
永久 ところで、消費税率アップを延期した一方で、社会資本整備の予算は増やす傾向にありますが、これについてはどうお考えですか。
 
牛尾 政府の費用で景気をよくしようというのはやめたほうがいい。だから、3党合意で10%までの増税を決めたけれども、安倍政権は半分延期したんですね。やはり、無駄な費用を削減するほうが先決だからと。
 
永久 でも、無駄の削減はなかなか進んでいないように見えます。個人的に、毎年、政府の行政事業レビューの評価者を委嘱されるのですが、削減すべきと指摘された事業が、そのあと体裁が変わっても、実態はまったく変わらないようなものが少なからずあります。これを徹底すべきということですね。
 
牛尾 そうですよ。そうしないと支出はどんどん増えていく。たとえば、介護に対する予算は2000年まではゼロだったんですよ。その後、介護保険制度がつくられて、いまでは給付の総費用が9.5兆です。2025年になると21兆円程度になるという試算がある。
 
永久 1年につき1兆円弱増えていますね。大雑把にいうと、一人当たりの負担が1万円ずつ増えていることになります。
 
牛尾 介護保険制度がなかったころは、大家族主義で、家で両親の面倒を見ていたわけです。扶養家族控除はわずかな額ですよ。そこに、こういう制度ができると、子供夫婦はいち早く親を介護施設に入れちゃう。親も泣く泣く行くわけですよ。だから、施設という選択肢は残しつつも、家で面倒を見ている人には、徹底的に減税すべきだと思う。福井県や富山県では、6割がそうした大家族で、出生率が1.5ぐらい、経済も順調に行っているんですよ。
 
永久 たしか、富山や福井は、一人当たりの畳の枚数が多いとか。平均的に家も大きいですね。
 
牛尾 そうそう。おじいさんとおばあさん、それに3組の子供夫婦、つまり6人が働きに行く。おじいさんおばあさんが孫の面倒を見るから、レベルの高い保育ができる。日本の美徳として、三代にわたって相互に助け合うという社会協力の基本があるんです。それを忘れ、介護施設に頼るから、世界の先進国に比べても、介護費用が大きくなってしまう。
 
永久 ただ、現実的に、東京近辺でそれをやろうと思っても、物理的に家が小さくてできないとか、両親が住む故郷に帰っても仕事がないとか、いろいろ課題はあると思います。
 
牛尾 東京では、先の見込みがない人が7割だからね。そういう人は故郷へ帰ったらいいですよ。
 
永久 ですが、仕事がないとなかなか帰れませんよね。
 
牛尾 その仕事をつくるのが、その7割の人たちです。中間管理職でまあまあ優秀だけれども、それより上は難しいという人たちが10人束になって会社をつくれば、結構いいものができますよ。いま東京の上場会社は、初任給で22万から25万円、ボーナスを入れてそれを18カ月分ぐらい払っているわけでしょう。そういう会社は地方にはあまりない。だけど、月収16万円でも、実は地方のほうが生活は豊かなんですよね。
 
永久 僕も地方出身ですから、それは実感します。JターンとかIターンも含めて地方に帰っている人たちは多少増えているようですね。
 

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