「子どもが売られない世界をつくる」―かものはしプロジェクトの挑戦

かものはしプロジェクト 共同代表 青木健太 (聞き手:PHP総研 山田花菜)

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コミュニティファクトリーで生産されているコースター

――そうして農村で始められたのが、農村の女性の皆さんが生産した商品をカンボジア土産として販売する、コミュニティファクトリー事業ですね。農村の女性ということですから、もともと農業をされていたのではないかと思うのですが、そこで農業の強化ではなく、お土産づくりという新しい仕事をつくることにされたのはなぜですか?
 
青木:3つ理由があって、ひとつは僕たちに農業の強みがなかったことです。専門知識などの強みをもって農業の支援をしている団体さんはほかにもあったので、うちがわざわざやる意味があるのかという問題がまずひとつ。
 それ以上に大きかったのは、僕たちがターゲットとするような最貧困家庭の方は、土地を持っていないということです。どんなに収益性や生産性の向上施策を考えても、土地を持っていない人々の収入にはつながらない。だから農業の技術向上や農産品の加工といったことは、僕たちにとってそんなに大きな選択肢ではなかった。
 もうひとつはマーケットの問題でした。たとえば有機野菜をつくりましょうといっても、カンボジアに有機野菜のマーケットはなかった。やっぱりツーリストのほうがマーケットとして魅力的だったので、ツーリストに対して売れるものをということで、お土産品となるハンディクラフトに踏み切ったというところがありますね。
 
――いぐさを材料としたものづくりを選ばれたのは?
 
青木:最初はI love Cambodiaっていうブランドで始めたんですけど、始めるにあたって、マーケティングのようなことをやりました。いぐさでつくることにしたのは、まず対象とする女の子たちは、働いた経験もあまりなく、小学校も途中でやめている子が多かったので、彼女たちが覚えやすい、シンプルな作業が多いものにしたいと思ったことがひとつ。シルクとかを材料にすると、工程が難しくなってしまうんです。長い目で職人育成をやるというのもひとつの価値だと思いますが、かものはしの活動には合わないので、3か月から半年あればある程度トレーニングが終えられるような、シンプルにやれるものがいいよねと。また、当時そんなに競合が多くなかったということもあります。
 
――コミュニティファクトリーでつくった商品は、どんな層を対象に売られているのですか?
 
青木:アンコールワット目当てに来るツーリスト向けです。現地のお土産として。いまでもマジョリティはそこです。
 自分たちの工場を始めたのは2008年ですが、コミュニティファクトリー事業が動き始めた2006年頃は、観光産業は伸びつつあったのに、お土産をつくっているようなところはほとんどなかったんです。カンボジアで売っているお土産の8割は海外製という状態(笑)。
 
――お土産物あるあるですね(笑)。
 
青木:中国とか、マレーシアやベトナムからお土産を買ってきて、それっぽいものを並べておくっていう(笑)。ツーリストにはそんなにわからないですからね。日本でもそういうことはありますよね。温泉地のお土産だけど、別にその地域でつくっているわけではないものとか。
 絶望的にカンボジアにものづくりの能力がなくて、買ってきたほうが安いという状況だったからなんですけど。

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