子どもたちの意欲を育む大人の関わり方
――児童養護施設の子どもたちへの学習支援を行っているNPO法人3keysの森山さんに取材をさせていただいた際に、児童養護施設の子どもたちは、親というか、「絶対的に甘えられる他人じゃない人」が欲しいんだけど、どんなに親身になってくれる、信頼できる職員さんがいたとしても、「この人には帰る家があって、家族という自分よりも大切な人がいる。自分はいつか絶対に離れなければならない存在である」と考えてしまって、とくに中高生は大人に対して心を閉ざすようになりがちだというお話を伺いました。
ブリッジフォースマイルの場合、高校生をメインに関わっていらっしゃると思いますが、そうした子どもたちに、新たな大人たちと関係を結ぶことを促すのは難しくはないですか?
林:そうですね。子どもにとって一番頼れる存在であるはずの「親」の代替機能には一体なにがあるのかと考えたときに、ひとつは「いい人と出会うこと」だと思ったんです。「いい人」っていうのは異性だけではなくて、人との出会いって、その人の人生にすごく大きく影響するものだと思っているので、その可能性を探りたいんですよね。
実際やろうと思ったら、本当に難しいんですよ。でも、結局それは子どもたちが社会に出たらやっていかなければならないことなんですよね。新しい人間関係をつくって、その中から信頼できる相手を見つけて、なにかあったらその人に頼れる環境をつくっていかなければならない。難しいのは承知の上で、やっていかなければならない内容だと思っています。
実は、自立ナビの活動をしていても、ボランティアさんのほうが落ち込んでしまうこともよくあるんですよ。たとえば、「月に1回会おうね」という前提になっていて、ボランティアさんから「次はいつにする?」と連絡しても、子どもから「忙しいから今月は無理」と言われてしまうこともあるんですが、そうすると「自分は必要とされていない」と思ってしまったりするんですね。
だから、「そういうこともありますよ。あなたのことが嫌いで会いたくないわけじゃないんです。『何かあっても相談できる人がいる』ということが子どもに伝わっていれば、それで十分。実際に会わなくても、あなたがいてくれる価値があるんです」ということを丁寧に伝えていかないと、ボランティアさんのほうが折れてしまう。
だけど、子どもたちからすると、本当に相談したい相手は、その人じゃないのかもしれない。そうだとしても、それもしょうがない。だから私たちは、「アトモプロジェクト」など、大人と接する機会をできるだけたくさんつくっていく。その中から信頼関係を結ぶ大人を選び取るのも、子どもたち本人の力に任せるしかない。
とは言え子どもたちもそれぞれ違うので、「月に1回会って一緒にご飯を食べる」という仕組みに、とりあえず乗れちゃう子もいるんですよね。「本当はこの人じゃないんだけど、まあいいか」みたいな(笑)。他人と関係を結ぶことが得意な子なら、何回か会うと、「実は昔こんなことがあった」と、自分の内面を教えてくれるようになったりとか。だから、やっぱり時間の共有も必要だなと思っています。