子どもたちの意欲を育む大人の関わり方

NPO法人 ブリッジフォースマイル 代表理事 林恵子

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――東日本大震災の支援現場でも、似たようなお話をよく耳にしました。「支援疲れ」というのか、「がんばれ」と言われ続けるのも疲れてしまうと。

:難しいのは、どうやったら本音を言い合える関係になれるのかというところなんです。子どもたちは、たとえば施設の職員に対しても、すごくいい子でいようとするんですよ。職員の方々から聞いたのは、「施設を出て、うまくいっているときはよく連絡をくれるんだけど、うまくいかなくなると連絡が途絶える」ということ。やっぱり子どもたちにも、錦の御旗を掲げたいという気持ちがあるんでしょうね。施設に帰ってくるときには、後輩たちにお土産を持って、「こんなにうまくいっている」という話をするんだそうです。本当は悩みや相談したいことがあるのに、弱みを見せられなかったり、「こんなによくしてもらったのに、期待に応えられない自分」に申し訳なさを感じてしまったりしているようで。

 その点、私たちのような団体は、施設の職員の方々よりは、子どもたちと距離があるんですよね。ちょっと離れた距離の人だからこそ言えることってあるじゃないですか。カウンセラーがその典型的な例だと思いますが、家族や仲のいい友達には話せないことが、赤の他人だったら逆に話せるとか。だから「ちょっと離れているからこそ言いやすい」関係のようなものもつくっていきたいんですよね。

――時と場合で、柔軟な距離感が必要ですね。

:あとは相手によって使い分けることもありますね。「この子はなんでも自分でやれてしまうけれど、だからこそ悩みが言えないんじゃないかな」という子には、「言っていいんだよ」と包み込むような関わり方が大事だし、逆にこの子けっこうずる賢いなっていう子どももいるんですよ(苦笑)。「自分はこんなに困っている」「これが足りない」といったことをアピールして、なんでもボランティアを頼ろうとするとか。そういう子に対しては、「これは自分でどうにかできるよね」といったセーブをかけて、自立を促さなければならないし。その辺りのバランスが難しいところだし、自立支援の肝だなということは、やっているうちにわかってきました。

 以前は「いろいろ足りないものがあるから、それを補えばいい」「このかわいそうな子どもたちには、こういう環境を用意してあげれば幸せになれる」と、ものすごく短絡的に考えていたんですが、子どもたちの意欲はどうやったら育まれるのか、そのために大人たちはどうかかわればいいのか、その距離感や押したり引いたりのバランスを考えるようになりました。

 「この子にいま必要なのはこういうサポート」と正確に見立てることも難しいし、彼らを取り巻くたくさんの大人たちの間でその認識を共有して、足並みをそろえたり、役割分担したりするのはさらに難しいんですけど。

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