諦める理由より、諦めない理由を多くつくりたい
「変える人」No.11では、子どもたちを取り巻く格差の解消を目指して活動するNPO法人「3keys」の森山誉恵さんをご紹介します。
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成熟した網の目からこぼれた問題
森山さんが子どもの貧困や格差の問題にかかわるようになったきっかけは、大学時代にさかのぼる。
「はじめから児童福祉に関心があったわけじゃないんです。大学に入学してすぐの頃は、ビジネスコンテストに参加したり、中小企業の社長との人脈を積極的につくったりしていました。2年生のときには、あるIT企業で新規事業を任せてもらえるようにもなりました」
そこで森山さんは、日本がいかに物質的に豊かで恵まれた社会であるかを痛感したという。
「たとえばITの世界でなにか新しいことをやろうと思っても、高度な技術や知識を持っている人がつくっていくような分野しか残っていませんでした。そういうのが好きな人もいると思うんですけど、私はあんまりやりたいことが見つからなくて。むしろ、成熟した社会だからこそ必要な仕事があるんじゃないかと思うようになったんです」
さまざまな社会インフラの整備に、日本はかなりしっかり取り組んできたが、その網の目からこぼれてしまった課題があるのではないか。とりわけ教育や福祉の分野に興味を持った森山さんは、現場を見てみたいと調べていく中、「Yahoo!ボランティア」で家のすぐ近所に児童養護施設があることを知った。
「そんなところに施設があるなんて知らなくて、びっくりしました。実を言うと、児童養護施設がどんなところなのかも知りませんでした。そこで学習ボランティアを募集していることを知って、家庭教師の経験もあったので、それなら自分にも何かできるかなと思って行ってみたんです」