子どもたちが主体的に学べる居場所を
やりたくないことは身につかない
東京シューレ立ち上げ当初は新しい発見や気づきの連続で、反省することも多かったという。
「教師時代、私は学校の枠組みの中では“子どもとともに派”だったんですけど、東京シューレで子どもたちといろんなことに取り組んでいく中で、ほんとうの意味で子どもの立場に立っていなかったんだということに気づかされました」
学校の教師は子どもに対して権力を持ち、上からなんとか子どもを教育しようとする。子どもたち一人ひとりを尊重したいと考えていた奥地さんでさえも、そうした学校の価値観に染まっていた部分があることに気づかされたという。
「心細い資金の中から費用を捻出して講師を呼んで講座をしているのに、参加しない子どもがいたりすると、どうしても気になってしまって。一回でやめておけばいいものを、何度も何度も『一緒にやらない?』と誘って、『奥地さんはしつこいなあ、元学校の先生だからね』なんて言われたりして(笑)。学校の教師って、ひとりも取りこぼさないように授業をするように努めていますから、輪に入ろうとしない子どもがいると、違和感をもってしまうんですよね」
そうした文化の中で育ってきているため、新しく入ってきたスタッフも、そうした場面に出会うと、たいていは違和感をもっているようだと奥地さんは言う。慣れるまでに、だいたい2年はかかるそうだ。
「だけど、子どもがほんとうにやりたくなればやるようになるし、そうでなければむりやりやらせても身につかない。やっぱりそのときのその子を尊重するっていうことが大事ですよね」
たっぷり休んで充電し、自らやる気になったときの子どもたちの学ぶエネルギーは目を見張るものがある。信じて待つことが必要なのだ。