子どもたちが主体的に学べる居場所を

NPO法人東京シューレ 理事長 奥地圭子

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NPO東京シューレ 理事長 奥地圭子

「先生、怒ればいいじゃないか」
 
 「子ども中心」の奥地さんの考え方の素地は、22年におよぶ教師時代の実践で培われてきたものでもあった。中学生のときに『二十四の瞳』に感動し、教師を志したという奥地さん。新任教師の頃は授業がうまくいかないこともあったという。
 
「授業がはじまって15分も経つと、子どもたちががやがやしてきて、後ろを向いて消しゴムを飛ばしたりしているんです。どうしようかなって困っていたら、ひとりの子が私のほうを振り返って言うんですよ。『先生、怒ればいいじゃないか。前の先生だってそうだったよ』って。そんなこと言われたら、よけい怒れないじゃないですか」
 
 怒って静かにさせて行う授業では意味がない。子どもの視点に立ち、どうしたら興味がもてるか、どうしたら一緒に考えられるか、授業研究を重ねた。
 
「私が教師になったころはちょうど民間教育運動が盛んで、私もいろんな研究会にせっせと参加していました。自分の授業をテープに録って、テープ起こしをして、研究会に持って行って、先輩方にアドバイスをもらうんです」
 
 そうして授業を変えていくと、子どもたちが生き生きとしてくる様子が手に取るようにわかり、とても楽しかったという。
 
「社会の歴史で縄文時代から始めようとしても、子どもたちはその前がどうだったのか知りたいんですよね。そういう興味が大事だなと私は思っていたので、自然史の学習をしたりして。恐竜の大きさを体感するために、2階から子どもたちが出す指示に従って、別の子どもたちが校庭にやかんの水で恐竜を描いたりもしました」
 
 惹きつける授業をすれば、子どもたちの目は輝き、もっと学びたいという意欲も出てくる。そんな充実した教師生活を送っていた奥地さんが、教育に携わる場をフリースクールへと移すことになったのは、なぜだったのだろうか。

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