「地元から出ていた人間」の強みを生かして
NPO桜ライン311 代表 岡本翔翔馬
地元民だけど、被災者じゃない
支援者に対してヒアリングをすることは、被災者の思いを代弁することでもあった。
「支援に入ってきてくれる人たちに、『食材は何人分用意してますか』『どういう支援ができますか』と、率直に聞くようなことは被災者にはできないんですよ。やっぱり、自分たちのために『来てもらっている』という感覚が強いですから」
そういったことは、やはり地元の人間ではない方がうまくやれるのではないかと思った。
「だけど、完全に外の人間だと、今度は避難所とうまく交渉できない場合があります。陸前高田の中でも、そのあたりがちょっと難しい地域もある。そういう意味では、一旦外に出て帰ってきた僕はちょうどいい立ち位置にいて、やれることはたくさんあると感じました」
完全な被災者でもなく、完全な第三者でもない。その微妙な立ち位置が、逆にとてもうまく作用した。同郷同士の共感が被災者と話をするときの風通しをよくし、外に出ていた経験がよけいなしがらみに縛られず動けるようにしてくれた。
「家族や友達が苦しんでいる地元に支援に向かいたいけど、自分自身にも家族や生活があって、やりたいけどやれない、という人たちの思いを背負っている感じも、正直ありました」
動きたいと思いながら動けない人も多かった中、きっぱり仕事を辞めて地元に戻るのは、相当な覚悟を要する決断だったはずだ。
「そんなに大したことじゃないんですよね。やらないで後悔するよりは、やって後悔したいじゃないですか。引き返せばよかったかな、って思うところももちろんあります。でも、たとえばもう一回過去を選べるとしたら、それでも100%帰ってくるでしょうね。今から思えば、もっとうまくやれると思うし、やりたいこともたくさんありますから」
飄々としながらも、岡本さんの思いにブレるところはない。