被災地の方々に守られ支えられる支援
大槌町の様子(2013.10.23撮影)。写真の奥に見えるのは水門。
「続ける」という戦略
といっても、ただやってみたらうまくいったわけでも、思いの強さだけで乗り越えてきただけでもなさそうだ。支援する側が一方的にするのではないという思いの奥に、さらに強い哲学が鬼丸さんにはある。
「僕たちが大事にしている支援の考え方に『レジリエンス』があります。問題を抱えた当事者だからこそ立ち向かう力が生まれるし、当事者とそれを支える家族や地域の間でこそ回復力が生まれるという考え方です。地雷の被害者、ウガンダの元子ども兵士たち、被災者のみなさん、彼らにこそ問題を解決する力があるから、私たちはそれをお手伝いするだけでいい。もうひとつ『オーダーメイド』という考え方。一人ひとり、地域ごとに事情は違うから、それぞれに合った支援をしなければいけません」
そこには、段階に応じた支援のかたちがあると言う。
「緊急支援は時限的でいいと思うんです。一気に大量の人と資金とモノを投下する必要がありますから。でも、それは半年から長くても1年まで。そこから先は開発支援に変えていかなければならないと考えています。そこが私たちの出番です」
開発支援となると、加えてレジリエンスとオーダーメイドの考え方を両立させて成果を挙げていくとなると、当然ながら息の長い取り組みが不可欠となる。
「その地域や人に合わせて適切なヒントを提供しながら、自主的に意思決定できるようになるまで、どれだけ待てるか、寄り添えるか。時間がかかることを覚悟した上でかかわっていく。被災地の復興においては、そうした支援のあり方こそ大事だと思います」
テラ・ルネッサンスは、10年は復興支援に携わることを明言して資金調達を行った。活動資金全体の7割が寄付や会費、講演料収入といった自己資金で、使い道の自由度が高いことも強みのひとつだ。
「大槌には少なくともあと7年います、と断言できます。この間に、いろんな方に教えていただき助けていただきながら、続けたものは残るし、残ったものは本物になっていく。だから、『続ける』『残す』ということを基本に、大切にしてやっていきます」
被災地からも支援者からも信頼される姿勢がここに表れている。刺し子さんたちの優しさを生んでいるのも、彼らのこうしたしなやかな強さを感じ取っているからに違いない。