被災地の方々に守られ支えられる支援
刺し子プロジェクト事務所の作業風景
心の復興は進んでいる
純粋になにか役に立ちたいと思って被災地にやって来た団体は数多い。だが、なかなか地元になじめず、あるいは人々に受け入れてもらえず、引き上げた団体も少なくない。
「怒られたとか、嫌な思いをしたとか、それで被災地から帰って行くっていう話を聞くことが結構ありました。だけど、自分がやりたいと思ってやっているんだから、求められて来ているわけじゃないんだから、いろいろな反応があって当たり前。だから、そういうのを承知で来ていればいいだけだと思っていました」(吉野)
「腹の立つこともあるだろうに」と中村さんは言う。「どうしてそんなに穏やかでいられるのか」と疑問に思うこともある。でも、そんな彼らだからこそつくることのできた空間が、ここにはある。
「鬼丸さんも吉野さんも、みんなに優しいんです。言葉も、態度も。だから、みんなも優しくする。この場所を離れて家に帰れば、きっとそれぞれに、なにかしら抱えているんですよ。だけど、ここにいる間は、みんなが優しくいられるんです」
中村さんの娘さんがある日、「テラ・ルネッサンスに入って、鬼丸さんや吉野さんたちと一緒に働くには、どうしたらいいの?」と聞いてきたという。
「その瞬間、すごく嬉しかったんです。私の大好きなものを、子どもたちにもわかってもらえた、認めてもらえた、って気がして」
どこか幸せそうな母の姿が、どうやら娘の目には頼もしげに映ったらしい。震災前には考えられなかったような人生の選択肢が、大槌には生まれはじめているのかもしれない。
「復興が遅いってよく言われるけど、それって建物が戻っていないってことでしょう。でも、ここでテラ・ルネッサンスに少しでもかかわった人たちは、少なくとも気持ちの面では豊かになっている部分が確実にあります。あったかいものをもらったというか。うまく言えないけど、心の復興は進んでいると思います」
刺し子プロジェクトに込めた支援の気持ちは、大槌の人たちの心に響きはじめている。