自治体の首長に教育行政の責任と権限を集約すべき

政策シンクタンクPHP総研 主席研究員 亀田徹

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5.中立性を確保する方策を考える
 
 一般に政治的中立性の解釈はさまざまなされているが、「教育活動の中立性」を政治的中立性の中心におく考えがもっとも妥当だ。教育行政は「教育の機会均等、教育水準の維持向上及び地域の実情に応じた教育の振興」(地教行法第1条の2)をはかるために行われるものであり、教育現場におけるよりよい教育活動の推進が教育行政の目的だからである。
 
 「教育活動の中立性」の概念に関し、中立性が侵害されたケースとして、かつて、山口県宇部市立中学校で授業時間中に毛沢東思想を解説し、その立場から時事問題を解説批判したとして教育基本法違反とした裁判例がある。こうした社会通念の範囲を逸脱した政治教育が中立性を侵害するものととらえるべきである。政治的中立性とは「教育活動の中立性」がその中心であり、社会通念の範囲を逸脱した政治教育の禁止を指すというわけだ。
 
 では、逸脱を防止するにはどうすればよいか。
 学校における教育内容の逸脱を防止するには、学校現場での授業内容を直接チェックすればよい。現行では授業内容や教材をチェックする仕組みは設けられておらず、チェックシステムを導入することで、これまで以上に実態にそくした中立性の確保が可能になるに違いない。
 
 チェックを行う主体は、日常的に学校の状況を把握できる保護者がふさわしい。保護者は、子どもを通じて日常の授業の様子を把握するとともに教材を確認し、可能な範囲で定期的に授業を観察する。学校は、社会科や道徳を中心に教育内容に問題がないかどうか、あるとすればどういった問題があるかを保護者にたずねるアンケートを実施し、結果を公表する。
 
 いまは多くの学校で学校評価が導入されており、保護者も参加する学校関係者評価を実施する学校も増えている。学校関係者評価の一環として保護者によるチェックを実施することとすれば、無理なく実施できるはずだ。

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