自治体の首長に教育行政の責任と権限を集約すべき

政策シンクタンクPHP総研 主席研究員 亀田徹

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4.論点は政治的中立性だ
 
 つぎに、見直しにあたっての論点を考えてみよう。
 現行の教育委員会制度は、昭和31年の制度発足以来、その枠組みを大きく変更することなく現在まで維持されてきている。制度の趣旨は、つぎのように説明される(中教審資料)。
 
A政治的中立性の確保
  教育は、その内容が中立公正であることが極めて重要。個人的な価値判断や特定の党派的影響力から中立性を確保することが必要。
 B継続性・安定性の確保
  特に義務教育について、学習期間を通じて一貫した方針の下、安定的に行われることが必要。
 C地域住民の意向の反映
  教育は、地域住民にとって関心の高い行政分野であり、専門家のみが担うのではなく、広く地域住民の参加を踏まえて行われることが必要。」
 
 3つの趣旨のうち、「B継続性・安定性の確保」と「C地域住民の意向の反映」については、必ずしも教育委員会を設置しなくても趣旨を実現できることは比較的明らかだ。
 
 すなわち、教育という面から考えれば、子どもにとって重要なのは学校における学習内容であり、指導内容の大綱を定める学習指導要領は、ほぼ10年おきに改訂されている。言い換えれば、10年間は学習内容の継続性が確保されている。学習指導要領によって指導内容の継続性が確保されていれば、行政主体の継続性を特別に重視する必要はないだろう。
 
 また、住民の意向の反映に関しては、住民意思によって直接選ばれる首長が教育行政を担う仕組みのほうが住民意思をより反映することになるのは明白だ。さらにいえば、教育委員会を設けなくても、学校運営や学校評価への住民参加を促すことで、直接的に住民の意向を学校運営に反映させることができる。
 
 とくに大きな論点となるのは「A政治的中立性の確保」だ。教育基本法で党派的政治教育が禁止されているように(第14条第2項)、教育の中立性は「現代公教育の中核をなす原理」とされているからである(市川昭午『教育行政の理論と構造』教育開発研究所、1975年)。
 この「政治的中立性」とは具体的になにを指すものなのだろうか。

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