自治体の首長に教育行政の責任と権限を集約すべき

政策シンクタンクPHP総研 主席研究員 亀田徹

DS34927

 
2.民主党政権が見直しの実現可能性を高めた
 
 教育委員会制度についてはかねてから形骸化などが問題視されていた。ここに来て制度改正が実現する運びとなった要因のひとつに、制度の見直しを訴えていた民主党が政権の座についたことがあげられる。民主党は、政権交代を果たした衆院選の際に「現行の教育委員会制度は抜本的に見直し、自治体の長が責任をもって教育行政を行います」との政策を公表していた(民主党政策集INDEX2009)。民主党政権は、教育改革を3つのフェーズに区切ったその第3フェーズにおいて、教育委員会制度を定める「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(以下「地教行法」)の見直しを行うことを示唆していた。
 
 だが、民主党政権の推進力が弱まっていくなかで教育委員会制度の見直しの動きも後退していく。当時の文科省は、省内にタスクフォースを設置して制度見直しの検討を進めていたが、政権末期において簡単な選択肢を示したのみであった。
 
 民主党政権の動きがトーンダウンするのに対し、今度は自民党が教育委員会制度の見直しに前向きな姿勢を示しはじめる。同党は昨年の衆院選前から政権交代を見据えて安倍総裁のもとに教育再生実行本部をたちあげ、教育委員会制度の検討に着手している。
 
 昨年の衆院選において自民党は、「いじめ問題でも明らかになった、現行の無責任な教育行政システムを是正するため、首長が議会の同意を得て任命する『常勤』の『教育長』を教育委員会の責任者とするなど、教育委員会制度を抜本的に改革します」との政策を掲げた。一方の民主党は「地方教育行政法を見直し、現在の教育委員会制度を見直す」としたものの、具体的な方向性は示すことはなかった。
 
 政権交代後、安倍総理は教育再生実行会議を設置する。同会議は、いじめ問題に続いて教育委員会制度の見直しの検討を開始し、4回の議論を経て本年4月に提言をまとめた。教育長を責任者に位置づけるという教育再生実行会議の結論は、自民党内での議論の方向性に沿ったものであった。
 
 教育再生実行会議の提言を受け、制度設計の具体的な検討が中教審で進められてきた。

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