自治体の首長に教育行政の責任と権限を集約すべき

政策シンクタンクPHP総研 主席研究員 亀田徹

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3.教委と首長で見解は分かれる
 
 教育委員会制度の見直しに対する見解は、教育委員会団体と首長団体とでは大きく異なるものであった。
 
 中教審は審議経過報告を10月に公表し、おおむねつぎのような2案を提示した。
 
 「A案」首長を教育行政の執行機関とし、首長の補助機関として教育長を置く(教育委員会は首長の附属機関として設置する)
 「B案」教育委員会を教育行政の執行機関とし、教育委員会の補助機関として教育長を置く(ただし、教育委員会の権限を限定し教育長を責任者とする)
 
 この2つの案に対し、全国都道府県教育委員会連合会は、都道府県教育委員会のうちB案を支持する教育委員会が約6割であり、現行制度を維持すべきなどの意見も含めれば、教育委員会を執行機関として残すべきとの意見が約7割に達したとの意見書を中教審に提出した。
 
 ただし、同連合会の意見書は肝心の結論部分がはっきりしておらず、具体的にどういった制度にすべきかについての見解が意見書ではまとめられていない。地方教育行政制度が大きく転換されようとしている状況で、しかもその教育行政を担う教育委員会みずからが明確な見解をまとめられないという点に、教育委員会の受身の姿勢が垣間見えるのではないだろうか。
 
 また、全国市町村教育委員会連合会は、「現行維持の方向性での意見が9割を越えた」「B案を基調として欲しいという意見が大半を占める」との意見書を中教審に提出している。
 
 他方、全国知事会、全国市長会および全国町村会は、従来から、教育委員会の設置を自治体の判断に委ねる選択制とすべきとの意見書を国に提出していた。知事会は、「地方教育行政の最終的な責任者は、選挙で選ばれた、住民の意向を反映できる首長とすること」との意見書を本年7月にも文科大臣に提出している。
 
 さらに中教審のヒアリングにおいて、大津市長は「現行制度は責任と権限の所在が不明確であるという制度上の問題が大きい」と指摘し、「選挙で選ばれた首長が住民の意見を教育現場に反映させることが重要」と語った(全国市長会HP)。
 
 総じていえば、教育委員会側は現行制度に近い案を支持し、首長側は選択制も含め首長が教育行政を担うことができる制度改正を主張しているといえる。

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