成長戦略の本格化と発信力のアップを期待する

グレン・S・フクシマ(米国先端政策研究所上級研究員)×永久寿夫(政策シンクタンクPHP総研代表)

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7.日本のソフトパワーを英語で発信しなければ
 
永久 国際政治においては、もちろん軍事力や経済力などが影響力の源となりますが、一方で、伝統・芸術・文化、さらには価値観といったソフトパワーも大きな力を発揮します。フクシマさんはあるところで「日本のソフトパワーは相当なものだということを、日本人はもっと認識すべきだ」とおっしゃっていますが、少し詳しくお話いただけませんか。
 
フクシマ 日本の伝統文化も近年の文化も非常に魅力的なことは事実なのですが、それを十分に発信していない、説明し切れていないと思います。音楽や絵画などの美術品、料理、さらには工芸品や建築物といった技術など、言葉を使わなくても伝達できるものはいいんですが、文芸や学術、考え方、価値観といった何か説明が必要なものは、やはり英語で説明しないと限界がある。だから、英語教育にさらに力を注がなければならないと思います。
最近、驚くべき統計を見ました。TOEFLの「話す能力」の日本の点数が170国中で最下位なんです。実際、言論人が集まってディスカッションをする時など、ものごとを論理的に説得力ある英語で説明できる日本人が、あまりにも少ないのです。これではせっかくのソフトパワーを十分に発揮できません。
 
永久 それは、実感としてわかります。では、どうするか、なのですが、日本では世界に通用するグローバル人材を育成するプログラムをいろいろやっているんですね。具体的には、英語で教える授業とか、日本や諸外国の文化・伝統を学ぶ授業とか、欧米の教育方法を取り入れたりとか、そうした大学のプログラムに国がお金をつけるんです。
 政府の仕事で、ある国立大学を見学したのですが、広大なキャンパスの一角に他とは違う雰囲気の建物がありました。授業もアメリカのような感じです。そこで、そこにいたイギリス人の職員に聞いたんです。「これでグローバル人材が育ちますか」って。そしたら首をかしげるんですね。「どうして」とたずねたら、「この建物の中だけだから」って言うんですよ。
 つまり、キャンパスのわずかな部分だけが「出島」になっているだけで、ほとんどの部分は普通の日本の大学と変わらない。これでは、質でも量でもグローバル人材の育成は限定的にならざるをえません。出島ではなくて「開国」すべきなのではないか。教える側も教えられる側も世界基準で採用するということですが、これが政治的になかなかできない。何かグッドアイデアはないですか。
 

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