成長戦略の本格化と発信力のアップを期待する

グレン・S・フクシマ(米国先端政策研究所上級研究員)×永久寿夫(政策シンクタンクPHP総研代表)

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永久寿夫(政策シンクタンクPHP総研代表)

3.歴史問題では地域の安定性を重視する
 
永久 アメリカが「bad」と見ていたのは、慰安婦問題や教科書問題など、歴史問題でしたね。
 
フクシマ 2013年4月の安倍総理の「侵略否定発言」から12月の靖国参拝までの間、当時の橋下大阪市長の「慰安婦発言」や麻生副総裁の「ナチス発言」などがありました。こうした言動が国際関係に悪影響を与えるのではないかと懸念されました。
 ただし、2014年4月のオバマ大統領訪日あたりから改善がありましたね。あの時は、政府間でかなりの下準備と調整があって、オバマ大統領からは「尖閣列島には日米安保条約の第5条を適用する」「日本の集団的自衛権の行使に関しても賛同する」という発言が初めてありました。安全保障面での日米協力が徐々に深まってきて、昨年の安倍総理の訪米で固まったと思います。この時にも相当な下準備がありましたね。
 
永久 フクシマさんの発言の影響もあるのでしょう。「歴史問題の発言などはbad」というシグナルを出したら、日本政府は控えるようになって、しかもオバマ訪日や安倍総理訪米に際しては念入りな準備をしているわけですから。
 
フクシマ 米議会の関係者から随分ヒアリングをしたみたいですね。私に限らず、ワシントンの関係者から、民主党でも共和党でも、あるいは学者などからも、歴史問題にはあまり触れないほうがいい、将来に焦点を当てたほうがいい、というアドバイスが安倍政権発足の時からずっと発信されています。
 
永久 歴史問題については、政府が意識的にトーンダウンさせていったということですね。昨年の8月14日に安倍総理が談話を出しました。日本では賛否両論あって、「踏み込みが足りない」という人もいれば、「いや、あれで十分だ。きっちり謝罪も継続している」という評価がありますが、アメリカではいかがですか。
 
フクシマ 歴史認識の問題は、中身の問題もあるのですが、それ以上に、そういう言動によって、日韓関係、日中関係が悪化するのではないかと懸念する人がアメリカでは多いと思うんですよ。
 
永久 この地域の安定のほうが重要だと。
 
フクシマ そうです。特に、日韓関係がギクシャクすると、アメリカのアジア政策がやりにくくなります。とりわけ北朝鮮や中国に対して。だから、韓国と日本がもっと協調して、3カ国で協力できる体制をつくりたいという希望がアメリカ側にはあります。安倍総理の談話も、オバマ政権としては、中身を吟味するにしても、それに対する韓国や中国の反応が最大の関心事なのです。結果として、中国も韓国もさほど問題にしなかったので、アメリカも問題視しなかったということです。
 
永久 彼らの対応は微妙な感じでしたが、「bad」だった歴史問題というか、外交問題に関していうと、いささか「good」になってきたと理解していいんですか。
 
フクシマ 一言で言えば「remission(小康状態)」でしょうか。問題がなくなったわけではないけれど、沈静化した。でも、いつまた発生するかわからないということでもあります。
 

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