「分子の連携」を進め、稼ぐ力を高めよ

伊藤達也(地方創生大臣補佐官・衆議院議員)×荒田英知(PHP総研主席研究員)

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5.「分母の連携」から「分子の連携」へ
 
伊藤 自治体連携については、これまでは「分母の自治体連携」が中心でした。ゴミ収集などのように広域行政で行政コストを削減するというものです。これからは「分子の自治体連携」が非常に重要です。つまり、税収も含めて稼ぐ力を上げていくために連携するということです。政策をつくる時点での人材の共有化はもちろん、実行局面でも共同出資をするなど財務戦略から分子の拡大を図っていくことが必要です。こうした取り組みを新たな自治体連携として進めて、それぞれが持っている潜在力を発揮できる環境を整えたいと思います。
 
荒田 「分子の連携」というのは、今後取り組むべきことを実にわかりやすく示していると思います。拙稿「地方創生を深化させる『当たり前』の3原則10カ条」でもふれたのですが、日本の自治体は良くも悪くも自前のフルセット主義でやってきた歴史があって、それがDNAのように染みついていると思います。今回の地方創生でも、先行交付金を自分のまちが取れるかどうかが最大の関心事で、となりのまちはライバルという感覚が抜けていないように見えます。
 
伊藤 ライバルを大切なパートナーに変えないといけません。この点の意識改革を進めることが地方創生の大きなドライバーになると思います。
 
荒田 行政の発想はなかなかフルセットから抜けられないでしょうから、産官学金労言のような多様な主体が関わることが自治体間の垣根を下げるためには重要だと思います。さきほどの島根県と鳥取県の県境を超えた5市連携も、地元の商工会議所が熱心に連携を働きかけたと聞いています。
 
伊藤 それと、やはり「見える化」が大きなきっかけになりますね。石川県と福井県で協力して産業政策を進めようという動きがあります。これはRESASで見える化をしたところ、繊維産業が両県にまたがって緊密な企業取引があることがわかったのです。それなら、両県が協力して産業政策を進めようということになりました。

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