政策提言「新しい勤勉(KINBEN)宣言―幸せと活力ある未来をつくる働き方とは―」【1】

小峰隆夫(法政大学教授)×小島貴子(東洋大学准教授)×永久寿夫(政策シンクタンクPHP総研代表)

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5.バリバリ働いた時間を貯蓄して必要なときに使う
 
永久 小島さんが個人的に一番重要と思う提言はどれでしょうか。
 
小島 労働時間の貯蓄制度です。例えば、女性の場合、バリバリ働いている時の労働時間を貯蓄しておいて、結婚、出産、育児のときにそれを使うといったことです。男女を問わず、ライフステージによって働き方は変わるし、キャリアアクシデントも起こりうる。だから、元気なうちにバリバリ働いて貯めておいて、ある時期になって親の介護などが必要になったら、それを使うようにする。それができるようになれば、働き方も生き方も、自分である程度、見据えられると思うのです。
 
永久 例えば、20代の時に必死で働いて、月に20時間、30時間ぐらいの時間を貯蓄して、その分、40代、50代になった時に働いたことにするということなのでしょうか。給料を考えると、若い時の20時間分は支払われなくて、それが40歳、50歳になってから支払われるようになるということなのか。細かく考えていくと、なかなか複雑かもしれませんね。
 
小島 労働時間の貯蓄は、単純に1時間いくらというものではないという概念をつくるべきですね。例えば「勤続10年の人には、一定の貯蓄がありますよ」と。それを休暇やお金にするのもありですが、基本給だけもらって介護をする期間に充てるといったように、一時的に職場を離れる人に安心を与えるというイメージです。
 
小峰 マイナスの残業を認めるということだと思います。残業した時間を、例えば親の介護が必要になった時に、減ってしまった勤務時間として充てることができる。プラスの残業時間をマイナスの残業時間と相殺させるということです。たしかに、残業手当をどうするかというあたりは難しいですが、介護などで使わないのなら、大学のサバティカルみたいに自分の充電のために使っていいとか、いろいろ考えられますね。
 
小島 育休、産休で時短や休みを取っている女性と同じ場所でバリバリ働いている独身、あるいは子供のいない女性から、「自分たちに対する企業的な保障はどうなっているのか」とよく相談を受けます。「何でそこで不平等感が出てくるのかな」とも思うのですが、そう思うのであれば、その人たちにも、やはりサバティカルのように、自分のために使える時間を、制度だけではなくて、思想的にももてるようにしないといけませんね。
 

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