政策提言「新しい勤勉(KINBEN)宣言―幸せと活力ある未来をつくる働き方とは―」【1】

小峰隆夫(法政大学教授)×小島貴子(東洋大学准教授)×永久寿夫(政策シンクタンクPHP総研代表)

resizedD8A_0304
永久寿夫(政策シンクタンクPHP総研代表)

4.「多様化」「明確化」「情報公開」「新しい場」が重要
 
永久 ところで、小峰さんは提言の内容を「多様化」「明確化」「情報公開」「新しい場」の四つに分類されています。これはなかなか分かりやすいですね。
 
小峰 この四つは、私が特に重要だと思ったポイントです。「多様化」を実現するには、まず「明確化」が必要です。提言の中には「雇用契約をきちんと結べ」というのがありますが、日本の就職って何となく、企業のメンバーになるという感じで、あとのことにはあまり関心が向かない。だけど、それは実は暗黙のうちに無限定な働き方を企業と契約しているということです。無限定と多様は似て非なるのもので、無限定はいわば企業の選択、多様は働く人の選択でやれるということです。働く側は、自分がどういう働き方を選択したのかを自分自身が理解した上で就職しないといけません。
 企業による「情報公開」も重要で、公開すべき内容は労働時間、離職率、有休取得率、女性の比率など、いろいろあります。かねてから発表したらいいと思っていたのは「子宝率」、つまり企業別の合計特殊出生率です。要するに、こうした客観的な指標が公開されれば、これから働こうと思う人、そしてサービスやモノを買おうとする人にとっても、その企業を評価しやすくなる。企業側にとっては、評価されることは、自己改革のためのモチベーションにもなる。
 「新しい場」とは、特定の企業から与えられた仕事をやっているだけではなく、ボランティアでもいいし、余暇時間を使って別な仕事をしてもいいということ。この辺をもう少し柔軟にしたら、いろいろなことに気がつくし、新しい生き方もできるようになる。私が役人をやっていたころは、そこがかなり自由で、役人をやっていながらエコノミスト的な仕事もできました。いまは公務員倫理法などができて、職務専念義務が非常に強化されて難しくなりましたが、その辺をもう少しオープンにしたほうがいい。オープンイノベーションという言葉がありますが、オープンな状況で多様性を追求することがイノベーションや生産性の向上につながるのではないかと思います。
 

関連記事