6.逞しく、しなやかな自衛隊
金子 安全保障環境が厳しくなり、今回平和安全法制が通れば、さらに自衛隊の任務が拡大します。そうでなくても、これまで拡大してきているわけですが。
そうした中で、古巣の自衛隊に対して何を期待されていますか。
折木 あちこちでお話ししているのですが、東日本大震災を経験して、退任して改めて自衛隊勤務を振り返ってみると、自衛隊のすごいところとして、当然かもしれませんが組織力がしっかりしているということと、もう一つは現場力がものすごくしっかりしているということ。この二つだと思っています。
組織力という意味合いでは、具体的な方向性を示して部隊を統率していくという幹部の責任と、それから、現場力をもっと高めていく必要性が任務が増えるに従って高まってくると思います。それを、本当に時間が限られている訓練の中でしっかり積み上げていってほしいというのが願いです。
任務もより現実的なものになりますよね。ROE(交戦規定)もきっちり決めなければいけないし、本当に現実的な任務というのが目の前にあるという意識で将来に備えなければいけないと思っています。
現役の時に言ってきたのは、「今日に即応し、明日に備える」ということですが、今日、今の世界には今持っている能力で対応しなければいけないし、かといって、今のことばかり考えてもだめだから、防衛力整備や教育訓練など将来に備えるという、この二つの視点をやはり忘れないでもらいたいと思っています。
金子 著書の中で、自衛隊のキャッチフレーズの移り変わりが紹介されていますが、これからの自衛隊のキャッチフレーズはどういうものがいいでしょうか。
折木 私は「逞しく、しなやかな自衛隊」というのがいいかなと思っています。
逞しいライフルマン・マインドを原点にして、今後予想される多様な任務に竹のように柔軟に対応していってもらいたいと思っています。
金子 なるほど。
私は、「頼られる自衛隊」ではどうかと思っています。かつて「信頼される自衛隊」というキャッチフレーズがありました。それはどちらかというと、旧軍に対する不信感に対して、「それは違うんですよ、民主主義における自衛隊なんですよ」ということでそうなったのだと思います。
「頼られる自衛隊」は、それと言葉は似ているのですが、意図の面で信用できることはもちろんだけれども、能力的にも色々なことができて、国内でも、国外でも頼られる、自衛隊はそういう存在だというものです。
折木 これまである意味では、愛されていなかったから「愛される自衛隊」、信頼されていなかったから「信頼される自衛隊」という、そういう標語だったんですよね。
金子 そうですね。それに対して、「逞しく、しなやかな自衛隊」にしても、「頼られる自衛隊」にしても、それは自衛隊のイメージとかけ離れているわけではない。ネガティブなイメージに対して言いわけするキャッチフレーズではなく、自衛隊の強み、自衛隊への期待をそのまま表現するものにするほうがいいだろうという感じがします。