よりよき「国づくり」という観点から憲法の見直しを―与野党憲法改正案を比較する―
地方自治では保守的な自民党
第一の論点は、地方自治の強化である。現在の日本の統治システムは中央集権的であり、地方が行う事務に対する中央の決定とそれによる地方への資源配分が、行政の非効率化と財政の肥大化を招いていると考えられている。これを解決するには、地方自治を強化し、国の地方に対する関与を制限することが肝要であるとの認識から、これまで地方分権や道州制の議論が進められてきた。この議論を憲法レベルでいかに組み込むかが、注目すべきポイントである。
自民党の『日本国憲法改正草案』における地方自治に関する改正案は、実質的には現状維持と判断できる。現行憲法で規定されていない地方自治体の種類や、地方自治が二層制をとること、さらには国と地方自治体、地方自治体同士の協力について言及する一方で、専門家のなかで必要性が論じられている、自治体が発する条例の国が定めた法律への「上書き権」や、政権公約で示している道州制の導入などについては触れていない。地方財政については、地方自治は自主的財源に基づいて運営されることを基本とする、とはしているが、課税自主権や財政自治権などに関する記述は見られない。
公明党は、憲法改正ではなく、「加憲」という姿勢を見せている。加憲とは、現行憲法を優れた憲法とみなし、基本的人権の尊重、国民主権、恒久平和主義の3原則を堅持しつつも、新しい時代に対応した理念・条文を書き加えること、と説明される。公明党は、政権公約において、「中央集権的な国の統治機構のあり方を改めます。地域の自主決定により、地域特性を活かした経済発展をめざし、住民本位の行政サービスを提供できる『地域主権型道州制』を導入します」と述べ、さらに加憲議論の対象として地方自治の拡充を挙げているが、具体的な加憲案までは示していない。