子どもたちが主体的に学べる居場所を

NPO法人東京シューレ 理事長 奥地圭子

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漫画や本のたくさん置かれた日当たりのよい部屋

子どもとともにつくる東京シューレ
 
 たくさんの漫画や本が詰まった本棚が、カーペットの敷かれた部屋をぐるりと取り囲む。片隅にはピアノやギターが置かれ、壁際の棚には、さまざまなボードゲームが積まれているのも見える。ここに通う子どもたちは、どのように日常を過ごしているのだろうか。
 
「ふだんは時間割に沿って授業や講座を開いています。時間割はミーティングで設定したもの。どんな学習をしたいのか、どんな講師を呼んでほしいのか、子どもたちで話し合って決めるんです」
 
 東京シューレでの学習はすべて、子どもたちがなにをやりたいのか、どんな時間が欲しいのか、どんな過ごし方をしたいのかに基づいて、子どもたちがみずから決める。教科ごとの学習の時間もあれば、音楽やスポーツ、料理の時間もある。
 
「それをやりたいっていう子がひとりだけなら個別に対応するんですが、何人かいれば講座にします。その中から、自分が参加したいものを選んで参加するんです」
 
 さまざまに用意されているプログラムに「参加しない」という選択もある。東京シューレに初めてやってきた親には、時間割の説明とともに、そのことを必ず子どもに伝えるようにお願いしているという。
 
「でないと、『これが時間割だって』と言われると、だいたいの子どもたちは『これを全部こなすのか』と思ってしまいますから。学校のやり方が合わなくて学校と距離をとったのに、別の場所でまた同じようなやり方をしていたら意味がないですよね」
 
 学習プログラムだけでなく、合宿や旅行、周年祭のステージパフォーマンスなどのイベントもミーティングで決められる。子どもたち自身で発案し、計画を立てて、ユーラシア大陸横断旅行を実現したこともあるという。
 
「東京シューレのルールも、子どもたちがミーティングでつくっているんです。議長は子どもで、議題は誰がなにを出してもいいことになっています」
 
 状況に応じて、必要なルールは変わっていく。たとえば楽器の練習をしたい子どもと静かに読書をしたい子どもがいる場合、限られた空間の中でどう棲み分けるかを、子どもたち自身で考え、話し合う。
 
「時間で区切ったり、部屋を分けてみたりするんですけど、しばらくはうまくいってもやっぱりまた問題が出てきたりして。そうしたらまたみんなで考え直して、違うやり方を試してみるんです。なぜそのルールが必要なのか、子どもたち自身がわかって設定していますから、学校のように出来あがった校則があって、入学したら一方的に守れって言われるのとは全然違うと思います」
 
 東京シューレは、大人が与える場所ではなく、子どもとともにつくる場所。「子ども中心」のその原則は徹底されている。

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