私たちと地域の未来に、新しい可能性を

特定非営利活動法人 NPOカタリバ 代表理事 今村久美

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コラボ・スクール大槌臨学舎の校舎

コラボ・スクールがめざすかたち
 
 今年の10月に新たな校舎へと移った大槌臨学舎もまた、次なるステップを踏み出している。あたたかみのある木造の建物には、教室や自習室とともに、ノートパソコンとヘッドホンを配備したスカイプルームが設けられている。
 
「フィリピンで英語の教育スキルを学んでいる現地の大学生に、週1回の英会話指導をしていただいています。支援をいただいている企業のテレビ会議システムとコラボ・スクールのスカイプルームを結んで、先方の社員さんに生徒に対してプレゼンテーション研修をしていただいたことも。大学のAO入試に挑戦する生徒には、その大学のOBとの間でスカイプを使って、面接の練習をしたりもしましたね」
 
 廊下にはiPadとヘッドホンが置かれ、いつでもネイティブの発音を確認できるようにするなど工夫が凝らされている。こうした設備の充実した校舎に、110名ほどの中学生と40名ほどの高校生が通ってくる。習熟度別に分かれた授業のほか、自習室にもスタッフが待機していつでも質問を受け付けるなど、個々のサポートにも抜かりがない。さらに学校との連携強化も見据えている。
 
「女川では小学校との連携ができ始めていて、授業にコラボ・スクールのスタッフを参加させてもらっています。そういう関係性が深まれば、学校での学習内容を元にコラボ・スクールでの学習プログラムを組んで、勉強の効果をもっと高めることもできるはず。それって、ひとりひとりの生徒にとって、すごくいいことだと思うんです」
 
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 ところで、大槌臨学舎は大槌中学校の対岸にあり、すぐ近くに橋が架かっているにもかかわらず、子どもたちはスクールバスでやって来る。
 
「橋の幅が狭くて歩道がない上に、工事車両が頻繁に往来するので、通学路として認められていないんです。たった10数メートルの橋をわたれないために、川の向かいにある大槌臨学舎や仮設住宅には、少し遠くのバイパスまで大回りをしなければなりません。暗い夜道を歩かせるのも危ないので、バスを手配せざるを得ませんでした」(川井)
 
 当初はぎくしゃくした教育委員会や学校とも、徐々に理解が得られ、良い関係がつくられてきた。地域や学校との連携がさらに深まり、子どもたちの学習環境が整えられ、そして復興が進んだときには、きっとこの橋も大手を振って渡れるようになることだろう。

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