教育現場と子どもの世界のニューノーマル

放課後NPOアフタースクール 代表理事 平岩国泰 (聞き手:PHP総研 山田花菜)

2、学童と行政が緊急時に備えて考えておくべきこと
 
――近隣の学童との連携はあったんですか? オンラインでは岩手の学童などともつながったということでしたが、近くの学童を閉めるから、そちらに通っている子どもを預かるとか。
 
平岩:実はそれも行政への提案のひとつだったんですが、そこまではできませんでした。自治体によって差はありますが、東京都の場合、保育園や学童は事業者に運営を委託していることが多いんです。つまり、保育園や学童ごとに事業者がばらばらで横のつながりがあまりないので、行政がリードしないとそうしたことはできないんです。
 
 開ける保育園を3つくらいに絞ってほかは休園しているような自治体もありましたが、ほとんどの自治体ではできなかった。本当は2,3か所ごとにまとめてしまえるといいと思います。5人ずつしか来ていない保育園が3か所あれば、1か所にまとめても15人ですから、スペースがあれば預かれます。そうするとスタッフも休みが取れますから、そうした試みもやってみるべきだったと思っています。
 
――これからの課題という感じですね。
 
平岩:そうですね。でもこの課題がいちばん難しそうだと思っています。事業者がたくさんいるのと、そこまでどうやって通うのかという問題があります。小学生だと、隣の学区の小学校まで通うのもなかなか大変ですよね。移動距離が長くなり、慣れていない場所になり、ということを考えるとその施策は難しそうなので、利用者を本当に必要な方に絞り、時間短縮運営にするとか、土曜日は休みにするとか、そのあたりが今後危機が起きた場合の現実的な対応策かなと考えています。
 
――コロナ禍によって仕事がなくなった業種もあれば、ニーズが爆発してものすごく忙しくなった業種もあると思います。アフタースクールは出られるスタッフは限られ、かつニーズはあるという点で忙しくなったほうだと思うのですが、臨時のボランティアやアルバイトを入れたりはされたんですか?
 
平岩:あまり入れられませんでした。これも反省材料なんですけど、実際「なにか手伝いますよ」と言ってくれる人はいたんですが、慣れていない人がこのタイミングで突然入るというのは難しかったですし、感染が心配されているような状況では、いろんな人が出入りするということもリスクだし、といったことを考えると受け入れはできなくて。
 
 ですが、こうした状況ではそうした力もうまく巻き込んでやらないと、自分たちだけで背負うのは大変です。ですから、来る危機的状況に備える意味でも、ふだんからいろんな意味で開放的にしておいて、人や場所が柔軟に増やしたり減らしたりできるようにしておきたいと思っています。
 
――そのあたりは難しいですよね。労働力の柔軟な移動は必要だと思いますが、感染症は行動履歴の読めない人が入ってくるのが怖い災害ですし、対象が子どもの事業ということで、変な人が入ってくるようなことがあると大変です。信頼関係ができていることに加え、健康リスクがないかといったことも見ながらでなければ現場に入ってもらえないので、ぱっと人を付け替えるということが難しいタイプの危機だったということは感じています。
 
平岩:まったくその通りです。なので今後は、週に1回程度来てくれるボランティアさんなど、この人なら間違いなく安心という人が数人でもいてくれたら、こういうときには力になってくれるだろうなと思っています。

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