児童養護施設の子どもたちのスムーズな門出を応援したい

NPO法人 ブリッジフォースマイル 代表理事 林恵子

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――子どもたちの周囲からリスクをすべて排除してしまうのではなく、リスクを踏まえたつきあい方を学べるようにすることが大切なんですね。
 
:巣立ちプロジェクトなどのために寄付を集めるときにも、いろんなものをいただきます。少し傷んでいるお洋服などをいただくこともある。思い入れのある品を、まだ使えると思って提供してくださったんだと思うし、その気持ちはとてもありがたいんですが、場合によっては、子どもたちの門出を祝うにはちょっと違うかな、と思うようなものも入ってきてしまいます。そういうときには、「子どもたちに選んでもらう」というフィルターをかけることで、提供してくださった方も嫌な思いをしないように、かつ子どもたちにも喜んでもらえるように、ということを心掛けています。私たちが間に立って、いくつかのフィルターをかけていくことで、関わる人それぞれの思いが調整できたらいいなと。
 
――社会と子どもたちを「つなぐ」という役割には、ただパイプとなるだけでなく、フィルタリングの機能も求められるんですね。
 
:そうですね。活動を始めた10年前はわからなかったんですが、児童養護施設の職員の方々も子どもたちも、いろんな葛藤を抱えながらがんばっている。しかも職員一人ひとり考え方は違うし、子どもたちも一人ひとり環境も個性も全然違う。そうしたことを理解して、多様性を受け入れながら柔軟に対応していくことが求められます。ただ、方針がぐらぐらしていると「あの団体、いったいなにがしたいの?」と言われてしまうので、そのつり合いをとっていく、300人以上のボランティアとすり合わせていくというのは、本当に、とっても大変でした。
 
(第二回「子どもたちの意欲を育む大人の関わり方」へ続く)
 
林 恵子(はやし けいこ)*1973年、千葉県生まれ。大学卒業後、大手人材派遣会社パソナに入社。
子育てとキャリアの両立に悩む中参加 した研修をきっかけに児童養護施設の課題に気づき、2004年12月、「ブリッジフォースマイル」を設立。2005年6月にNPO法人化し、パソナを退職。
養護施設退所者の自立支援、社会への啓発活動、人材育成を活動の3つの柱とし、さまざまなプログラムを提供している。
 
【写真:遠藤 宏】

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