児童養護施設の子どもたちのスムーズな門出を応援したい

NPO法人 ブリッジフォースマイル 代表理事 林恵子

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画像提供:ブリッジフォースマイル

――具体的には、どのようなサポートをされているのですか?
 
:私たちの活動には3つの柱があります。施設を退所して社会に巣立つ子どもたちを応援する「自立支援」、児童養護への関心を高め、子どもたちが笑顔で生きていける社会をつくる「啓発活動」、子どもたちに直接かかわる大人たちがよりよい支援を行えるようにする「人材育成」。
 
 最初に始めたのは、高校3年生向けの「巣立ちプロジェクト」という自立支援です。高校を卒業した子どもたちは施設を出て、ひとり暮らしを始めることになります。大学進学を機に親元を離れてひとり暮らしを始める18歳はたくさんいますが、たいていは手続き面でも金銭面でも親を頼りますよね。ところが、施設の子どもたちは親を頼ることができません。施設の職員も非常に忙しいので、なかなか頼ることは難しい。そうなると自分ひとりでなんとかしようとして、うまくいかないことを抱え込んでいって、どうにもならなくなってしまう、ということがあります。家賃を数か月滞納して逃げるしかなくなるとか。
 
 そうした事態を防ぐために、引っ越しに必要な手続きや金銭管理の仕方、危険からの身の守り方など、ひとり暮らしを始めるにあたって知っておくべき知識やスキルを、全6回のセミナー形式で学ぶのが「巣立ちプロジェクト」です。
 
 6回のセミナーが終わる頃には、子どもたちが「ひとり暮らしでもやっていけそうだな。楽しみだな」と意欲を持てることを目指していますが、セミナーと言われると、最初はやっぱり「めんどくさいな」と思う子どもが多い。ひとり暮らしまでに少しでもお金を貯めておこうと、アルバイトで忙しくて、セミナーに出る時間なんてないという子も少なくありません。だから、社会人になった先輩たちも呼んだりして、楽しく学べる場にするための工夫はもちろん、最終的には「もので釣る」んです(笑)。セミナーに参加するとポイントがつくようにして、貯めたポイントは生活必需品と交換できるという仕組みにしています。全部参加すると、3万円相当のポイントが貯まって、スーツセットや調味料セット、洗濯機などの家電、パソコンといったものと交換できる。
 
 最初は「パソコンがもらえるらしいから、行っておいで」と先生に背中を押されて嫌々参加した子が、「意外と楽しかった」と6回全部参加してくれたりして。そうして、施設の仲間や先輩たち、ボランティアさんとわいわい楽しく知識やスキルを学びながら、生活必需品ももらえる、という仕組みにして、子どもたちの参加意欲が高まるようなプログラムづくりを心掛けています。

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