児童養護施設の子どもたちのスムーズな門出を応援したい
――アルバイトを休んだ分収入が減っても、その分生活必需品がもらえるなら、「行ってもいいかな」と思えそうですね。当事者の実情と気持ちに寄り添った仕組みだと感じます。
林:「巣立ちプロジェクト」は、退所前の高校3年生を対象としているんですが、退所後の支援プログラムもあります。施設を出た子どもたちが抱える問題のひとつは、孤立しやすいということ。孤立してしまうと、問題やトラブルがあっても誰にも相談することができずに、どんどん深刻になってしまいます。そうなる前に問題の芽を早く摘めないだろうか、ということで始めたのが「アトモプロジェクト」です。退所した「後も」つながりを保ち、なにか問題が起きたときに、気軽に大人に相談したり、仲間同士で情報交換をし合えるような関係をつくることを目指しています。
具体的には、退所した子どもたちが定期的に集まる機会としてバーベキューをしたり、「自立ナビゲーター」と呼ばれるボランティアが、メンターのようなかたちで子どもを一対一でサポートしたりしています。この「自立ナビゲーション(自立ナビ)」は月に1回、子どもがボランティアさんと会ってごはんを食べながらおしゃべりをする、というだけのプログラムなんです。お昼ごはん代として1,000円まで予算をつけているので、それでおいしいランチを食べる。だけど、施設を出てひとり立ちして仕事で毎日忙しいのに、お説教ばかりしてくるような人とは会いたくないですよね。人と人なので、相性だってあります。それは外部の人から強制的にマッチングされるようなものではないと思うので、誰に自立ナビゲーターになってもらうかは、子どもたち自身が選べるようにしています。ボランティアメンバーの一覧を見せて、「誰にやってもらいたい?」と。
ただ、ボランティアの方々も忙しい中時間を割いてやっていますし、子どもたちに人気があるからと言ってボーナスが出たりするわけでもないので、マッチングは慎重にやっています。年齢が近くて話が上手で、子どもたちを楽しませてくれるようなボランティアメンバーにはやっぱり人気が集中しますが、月に1回会うとなると、ひとりのボランティアが担当できるのは、ひとりかふたり。だから、子どもたちには第一希望から第五希望くらいまでを出してもらって、全員が指名した人の中からマッチングできるように、事務局で調整をかけるんです。こうやって「自分が選んだ人にサポートしてもらっている」という感覚を子どもたちに持ってもらうことも大事だと思っています。