すべての人が、思いを自分の仕事に込められるように

NPO法人クロスフィールズ 代表 小沼大地

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――今後改めて教師の道に進まれることはないのでしょうか。お話を伺っていて、これからキャリアを考えていく子どもたちが小沼さんのような先生に出会えると、とても大きな刺激や影響が生まれそうだと感じました。
 
小沼:いまでも教員はやりたいと思っています。いまは非常に重要な事業のかじ取りをやっているし、とてもやりがいを感じているので、いますぐということは考えていませんが、どこかのタイミングで。
 
 大学なのか、高校なのか、まだなにも考えていませんが、教えるという仕事を専門でやってみたいという気持ちはあります。いまも大学からの依頼で、何人かの学生のメンターを務めているんですが、すごくやりがいを感じるし、自分はこういうのが好きなんだなと改めて感じています。
 
 とは言え、実は「教員」へのこだわりはあまりないんです。大学時代までの僕にとっては、人生でもっとも影響を与えられたものが部活だったので、自分も部活の顧問になって子どもたちにいい影響を与えたいと思って教員を目指していたんですが、青年海外協力隊に行ってみたら、部活を上回る影響を与えられる経験となった。
 
 僕にとって教育とは「人に機会を与え、影響を与えること」。そう考えると、いま取り組んでいることもまさに教育事業ですし、学校に例えるといまは教員というよりも校長のような立場ではありますが、教育事業に携わっている自負と誇りと充実感を感じています。ただ、やっぱり教育の現場に行ってみたいなという思いも常に持っていますね。
 
――今後の中期目標はありますか?
 
小沼:ちょうどいま立て直しているところですが、いま提供している留職プログラムという事業には自信をもっているので、それを磨き込んで、数も質ももっと高めていきたいという方向性はひとつあります。
 
 また、ふたつめの方向性として、これまでは留職によるリーダーづくりというところに特化してやってきたのですが、留職から帰ってきたリーダーの方々が新しい取り組みにチャレンジしようとしている動きがあるんです。新しい事業を留職先のNGOと連携してやっていこうという試みが実際に始まっているのですが、ひとつ成功事例ができれば、世の中は大きく変わると思うんです。ですから、そうした成功事例づくりをお手伝いしていきたいということも考えています。
 
 もうひとつ、いまは20代後半から30代の若手社員向けにこのプログラムを提供していますが、それでは会社をまるごと変えるにはどうしても時間がかかります。中長期的に見て彼らが管理職になることを考えれば、若手だけをターゲットにした取り組みでも効果はありますが、やはりいちばんインパクトがあるのは、経営陣にこうした考え方を伝えることだと思うんです。
 
 いま、部長や本部長、経営層向けに、若手向けの数か月に及ぶ留職よりも短いスパンでNGOの世界を知ってもらえるようなプログラムを開発中です。会社の幹部層へのアプローチももっと強化していきたいと考えていますが、そうしたことを組織としてどのくらいの規模でやっていくのかは、まさにいま議論をしているところです。
 
――昨年からは、国内での留職も開始されたと伺っています。
 
小沼:いまはグローバルにやっていますが、実はもともとやりたいと思っていたのは、「青年国内協力隊」という名前の国内での事業だったんです。まさにいま地域おこし協力隊がやっているような取り組みなんですが、それをBtoBでやりたいと考えていた。地方自治体、あるいは中央官庁の職員を数か月間、国内でもっとも厳しい社会課題を抱えている現場に派遣して、そこで現場を見てもらって、それを法制度の設計に生かしていく、そういうことができたらいいなと。
 
 企業もそうですが、日本国内にこそ最先端の課題があって、それを解決する方策を打ち出す力を育てることが、日本を支える課題解決策になると思うので、そうしたことをやっていきたいと思っています。昨年はリクルートキャリアさんの社員を東北・石巻に派遣させていただきましたし、今年も復興庁から予算をいただいて、東北に企業を派遣する取り組みを、いくつかのNPOと連携してやっています。
 
 東北に限らず、NPOと行政が連携してものごとを解決するという流れを加速させていきたいので、クロスフィールズが企業と新興国のNGOの間でやっていることを、日本国内のNPOと行政の間でもできるような仕組みをつくっていきたいですね。

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