保育園からつながる地域コミュニティ

ナチュラルスマイルジャパン 代表取締役 松本理寿輝

A91A0839

――保護者の方との関係性をつくる上で、大事にされていることはありますか?
 
松本:誤解を恐れずに言えば、保護者の方とは、スタッフとお客様ではなく、子育てのパートナーとしての信頼関係を築いていきたいと思っています。保育園が保育サービスをギブして、子育て世代がそれをテイクするというギブアンドテイクの関係ではなくて、お互いがギブし合う、子どものためになにをしていくかということや、家庭であった素敵なこと、保育園であった素敵なことを語り合うとか。もちろん、大変なこともたくさんあるので、それもお互いに共有し合う関係になりたい。
 
 もちろん、私たちはある意味サービスの提供者ですから、そこは丁寧にやっていくのですが、保護者の方々との関係構築の中では、保護者の方々になるべく当事者意識をもって関わっていただけるように働きかけていきたいと思っています。
 
――この園で育つ子どもたちには、どのようになってほしいですか?
 
松本:それぞれが自分らしく、素敵に生きてほしい。これから社会はさらに多様化していくと思います。そうした中で、自分で進む道を選択して、その選択に責任をとれる子になってほしいとも思います。
 
 あるいは、他者との共存関係を素敵にデザインできるとか。自分だけのハッピーではなくて、他者のハッピーにも貢献することによって、より自分のハッピーも大きくなるんだということを経験して、そうした貢献を社会に対して返していけるような子になってほしいとも思います。
 
 一番の願いは、ものごとを判断するときに、軸を自分の芯に置ける子になってほしいということですね。他人がどう思うか、ではなく、自分がどうしたいかで意思決定できるような子になってほしい。でも、それは私の勝手な願いなので、結局はその子が本当にハッピーでいられたらいいと思っています。
 
 この園に通っている子どもたちが将来的にどうなっているかはわからないけれど、一つ夢があるんです。「まちの保育園」で育った子どもたちが親になったとき、自分の子どももこういう園で育てたいと思ってくれること。そうなってほしいという期待を込めて、やっています。
 
――進学などで一旦出て行くことがあっても、この地域で育って幸せだったと思って、自分が親になったとき、子どもと一緒に地域に帰ってきてくれるようなことがあったら理想的ですね。最後に、この「まちの保育園」を置くことで、このコミュニティや地域にどういうふうになっていってほしいですか?
 
松本:地域の人々に、まちの保育園を自己実現の場、自分が自然でいられるような場として使っていただきたいですし、みんながつながり合う場としていただきたいですね。そういうふうにして、子どもを中心に地域の人々がつながり合っていく中で、コミュニティコーディネーターは必要なくなっていって、自分たちで思いをもっていろんなことを企画して、自分らしく生活していけるように、みんなで支え合って、それぞれ心地よい距離感で関わり合えるようなコミュニティができあがっているといいなと思っています。
 
 
 
松本 理寿輝(まつもと りずき)*1980年生まれ。大学でブランドマネジメントを専攻する傍ら、児童福祉施設でのボランティアをきっかけに、幼児教育、保育の実践研究を始める。卒業後、博報堂へ入社。教育関連企業のブランディングに携わる。同社退社後、フィル・カンパニー副社長を経て、2009年に独立。国内外の幼児教育・保育視察、保育園での修行を積み、2010年、ナチュラルスマイルジャパンを創業。代表取締役を務める。
 
【写真:遠藤宏】

関連記事