保育園からつながる地域コミュニティ
――そういう意味では、保育に関心の薄い方でも自然と足を運べるカフェの存在は大きいですね。「まちの保育園 小竹向原」に併設されたカフェは、焼き立てのパンがおいしいと評判です。利用者はやはり近隣の方が多いですか?
松本:大半は近隣の方ですね。パンが本当においしくて、カフェ自体が大人気なので、地域の方に「混んでいて入れないんだよね」とか言われたこともありますが(笑)。
保育園とカフェは、それぞれで自立した運営をしていくために、別々の事業体でやっています。どちらかにぶら下がってしまうと、将来的な事業性を考えたときに、長続きしないかもしれないと思って。そうしたらオーナーの方が素晴らしいお店をつくられたので、「孤独のグルメ」に登場したり、いろいろとメディアで取り上げていただいて、全国から人が来るようなカフェになっています。
地域の方をメインターゲットに据えていますが、全国からお客さんが集まることで、保育園とともにあるカフェというスタイルを知っていただけるという面もあると思います。
――大人気のカフェだけに、全国から人が訪れるということですが、それによって「まちに開かれた保育園」と「安心・安全の確保」の両立という課題に不安が出てきたりはしませんか?
松本:園の入り口にあるカフェには誰でも入れるとは言っても、そこから保育園に入るためには、もうひとつ扉があります。そこはほかの一般的な保育園と同じように、セキュリティがかかっていて、来訪者はインターホンを押して、スタッフが確認して開錠しないと、中に入れないようになっています。
なので、すでに顔見知りになっている地域の方とか、保護者の方や卒園児も含めた子どもたちしか、カフェと保育園の出入りはできないんですよ。
――ガラス張りでカフェと保育園から互いの姿は見えるけれど、出入りは決して自由ではないのですね。
さらに、ガラス張りとは言え、きちんとお互いのプライバシーを保護しようということで、カフェも園も、1メートル掘り下げて建てているんです。だから、窓のところまで来てのぞき込めば、カフェで誰かお茶をしているなとか、子どもたちがペイントをしているな、という程度のお互いの雰囲気はなんとなく窺えますが、誰がなにをしているのかまでは見えない。そうやって落ち着いてお互いが過ごせるような建築的な工夫もしています。