子どもたちがまち中の人と出会える環境を

ナチュラルスマイルジャパン 代表取締役 松本理寿輝

A91A0493

――コミュニティコーディネーターは、地域のコンシェルジュのような存在ということですが、具体的にどんな活動をしているんですか?
 
松本:たとえば、子どもたちが粘土での制作に夢中になっているときに、地域に住んでいらっしゃるプロフェッショナルの陶芸家の方に来ていただいて、粘土遊びをもっと豊かにするとか。あるいは「昔遊びを教えたい」という気持ちを持ったおばあちゃんに保育園に来ていただいて、子どもたちと一緒にお手玉をつくって遊ぶとか。
 
 子育てが一段落したお母さんの「もう少し子どもたちと関わりたい。なにかしてあげたい」という思いを聞けば、ボランティアの機会を提供したり、逆に「子どもと直接関わる自信はないけれど、なにか地域に貢献したい」という方には、たとえば清掃のお仕事をお願いしたりとか。
 
 そういったことをコーディネートするというか、地域のいろんな人の想いを聞いて、「それなら、この場を使ってみてはいかがですか」とか「地域でこういう活動をしている方がいますから、ご紹介します」というように、地域のリソースをつなぎ合わせたり、地域の人同士をつなぎ合わせたり、という感じです。
 
 もちろん、コミュニティコーディネーターは根本的には子どものためにいるわけですが、「子どものためだから、みなさん機械的にいいことをしてくださいね」という場にはしたくない。大人も親も、自分らしく楽しく過ごして、自己実現のためにこの場を使っていただいて構わないと思っています。
 
 たとえば、大人同士で音楽会を開いて楽しむとか、趣味のフラワーアレンジメントを一緒に学び合うとか、そういう地域の学びの場としてカフェがあって、そこに子どもも大人も自然に存在して、つながり合っている、という状態がつくり出せるといいなと思ってやっています。
 
――コミュニティコーディネーターの存在は、ほかの保育園にはない特徴だと思いますが、その必要性に気がつかれたきっかけはありますか?
 
松本:人と人をつなぐことができるのはやはり人だから、地域と保育園、あるいは地域の人同士をつなぐ専任の人材が必要だと思ったんです。小竹向原の「まちの保育園」の1園目をつくったときは、私がコミュニティコーディネーターをやっていたんですが、どんな仕組みがあっても、思いを丁寧に聞いて、丁寧につなぎ合わせないと、概念やコンセプトを共有するだけでは、なんとなく人はつながりにくい。
 
 「いいことをしましょう」「おもしろい場所をつくりました」といくらアピールしても、そこが自分にとって意味のある時間につながっていると思えないと、人はなかなか定期的には訪れてくれないし、きめ細やかにその人の思いを聞き取ってつなげていくためには、人を介すしかないんですよね。
 
 保育士がその役目もできればいいのですが、私たちは、保育士は子どもの伴走者というか、常に子どもの傍にいてその学びに寄り添っていく存在と考えているので、地域に出て行くことは難しい。たとえば、地域の方とアポイントメントがあっても、その日に子どもの様子に気になることがあったら、やっぱり子どもと向き合うほうを優先する。そういうことを考えても、やはり専任のコミュニティコーディネーターを置いたほうがいいと思ったんです。

関連記事