子どもたちがまち中の人と出会える環境を

ナチュラルスマイルジャパン 代表取締役 松本理寿輝

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――「ドラえもん」の世界ですね。いまは大人も子どもも、時間に追われている印象があります。
 
松本:昔は時間的にも空間的にも、子どものモラトリアムを保障するゆとりがあったような気がします。また、お母さんがひとりで子どもと向き合う時間がこれだけ長いのは、人類史上初めての経験とも言われているんです。孤独の孤と書いて「孤育て」と言われるくらい、地域と断絶されてひとりで子育てしているお母さんが多い。そういう家庭を支える意味でも、地域ぐるみの子育ては大切だと思います。
 
 子育てで大変なことがあっても、近所で「わかるわかる」って共感してくれるお母さんとか、ほかの子育て世帯がいることで救われることもあるかもしれません。ちょっとした分担ができることによって、気持ちがどれだけ楽になるかということを考えても、地域の支え合いが生まれると、子どもだけでなくお母さんにとってもいい環境になると考えています。
 
 つまり、地域のみんなで子育てをすることは、子どもにとっても、地域の方々にとっても、子育て中のお父さんお母さんにとってもうれしい取り組みになるのではないかと思って、「まちぐるみの保育」というコンセプトを考えたんです。
 
 わざわざ意識しなくても、昔から地域内の交流が盛んなところはあると思いますし、少し昔の保育園や地域は、子育ての支え合いも当たり前にやっていたのかもしれません。いま、地域との関わりをわざわざ特徴として挙げているのは、こうしたことに意識的に取り組んでいるところが案外少ないということもあります。
 
 ところが、開かれた保育園として地域との関わりを促していくことを意識すると、今度は安心・安全面の課題が出てきます。池田小学校の悲惨な事件以来、安心・安全を確保するために、学校や福祉施設は閉じる方向にそれこそ意識的に進んできた部分もあると思うんです。
 
 安心・安全を確保しながら、いかに地域に対して保育園を開いていくか。この課題をクリアするための方法のひとつとして私たちが考えたのが、保育園とまちの中間領域としてカフェをつくることでした。まちの人が、いつでも、誰でも、来てくれて大丈夫ですよ、という状況をつくって、保育園と地域の出会い、地域の人同士の出会いを促したいと考えたんです。
 
 また、場所をつくるだけでなくて、ソフト的な工夫として、コミュニティコーディネーターという専門職も置きました。保育園と地域の方々をつないだり、地域の方同士をつないだりして、まちぐるみの保育が豊かになるように働きかける役割です。

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