集めたいのは「お金」じゃなくて「仲間」
NPOの実務と支援の経験を重ねて
ファンドレイジングマネージャーとしてかものはしプロジェクトのファンドレイジング全体を統括するようになった山元さんの充実感に比例するように、年間およそ4,000万円だった寄付額は1億円にまで増えた。そんな中、東日本大震災が起きる。
「僕がかものはしに入って3年目のことでした。検討の結果、僕らはミッションに忠実に活動を続けることを大切に考え、団体としては震災支援はしないということになりましたが、職員一人ひとりの個人としての思いは尊重したいので、震災支援に行く人にはボランティア休暇を認めることになりました」
そこで山元さんが参加したのが、「つなプロ」。被災者のニーズをくみ取り、課題を解決するために専門性を持ったNPO等の支援者と「つなぐ」ために、複数のNPOが連携して立ち上げたプロジェクトだ。
「ボランティアの方を集めて説明会を開き、準備を整えて現地に送るという活動の東京事務局を担当させてもらいました。それをETIC.さんと一緒にやらせてもらったのがご縁で、震災支援が一段落したときに、社会起業塾イニシアティブというプログラムのコーディネーターをやらないかと声を掛けていただいたんです」
社会起業塾イニシアティブとは、「起業家型リーダーの輩出を通じて、社会のイノベーションに貢献する」ことをミッションに掲げるNPO法人ETIC.が、花王、NEC、横浜市と共催で行っている、社会起業家育成プログラムだ。
「そこから徐々に、NPO支援というものに携わるようになったんですが、最初の1年は、かものはしに入ったときと同じように、まったく役に立てないことを実感するばかりでした。NPOの支援は未経験だったので当然と言えば当然なんですが、なにをどうしてあげたらいちばんワークするのかとか、どの部分がいちばんの課題なのかといった目利き力が、まったくなにもなかったんです」
それでも試行錯誤しながら1年、2年と取り組むうちに、少しずつポイントがつかめてきた。自身が所属しているかものはしプロジェクトに置き換えて振り返ることで、「たしかにこの部分がポイントだった」と、自身の見解を裏付けるだけの経験も、山元さんにはあった。
「自分が実際に実務をやってきた経験と社会起業塾イニシアティブのコーディネーターとしての支援の経験とを重ねながら失敗と成功を繰り返す中で、ポイントが洗練されてくるというか、自分の中で整理されてきたんです」
そうして得た知見をもとに、山元さんがNPOに対する支援を開始したのは、いまからおよそ3年前のことだった。(第三回「『よさそうなこと』ではなく『本当に変わること』を」へ続く)
【写真:永井浩】
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山元 圭太(やまもと けいた)*NPOマネジメントラボ代表。日本ファンドレイジング協会認定ファンドレイザー。元NPO法人かものはしプロジェクト日本事業統括ディレクター。 1982年滋賀県生まれ 同志社大学商学部卒。卒業後、経営コンサルティングファームで経営コンサルタントとして、5年間勤務の後、2009年4月にかものはしプロジェクトに入職。日本部門の事業全般(ファンドレイジング・広報・経営管理)の統括を担当。「社会起業塾イニシアティブ(NEC社会起業塾) コーディネーター(2011〜2013年)」「内閣府復興支援型地域社会雇用創造事業 みちのく起業 コーディネーター(2012年)」として、日本各地のソーシャルベンチャーやNPOの支援も行なう。
現在は、NPOマネジメントラボ代表として、「本当に社会を変えようとするチェンジメーカーの『想い』を『カタチ』にするお手伝い」をするために、キャパシティ・ビルディング支援や講演/セミナー、コーディネートを行っている。専門分野は、ファンドレイジング、ボランティアマネジメント、組織基盤強化、NPO経営戦略立案など。