集めたいのは「お金」じゃなくて「仲間」

NPOマネジメントラボ 代表 山元圭太

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ビジネスの常識が通用しないNPOの現場
 
 ファンドレイジングマネージャー候補として採用された山元さんだが、実はかものはしプロジェクトの求人ページで「ファンドレイジング」ということばをはじめて知ったのだという。
 
「やたらいかつい名前だなあ、なんて思って調べてみたら、資金調達のこと、と出て来て。かものはしに応募するとき、僕は開発の勉強もしていないし、英語もできないので、貢献できることがあるのだろうかという不安がありましたが、ファンドレイジングであれば、営利企業での仕事に近い感覚で役に立てるんじゃないかと思いました」
 
 当時、特にファンドレイジングをやりたいと考えていたわけではなかったが、その分野であれば貢献できそうだと考えた背景には、そこできちんと成果を出せれば、自由に動かしてもらえるのではないかという狙いもあった。しかし、ファンドレイジングの仕事はそう甘くはなかった。
 
「実は、最初は全然おもしろくなかったんです(笑)。せっかくNPOに入ったのに、企業にいたときとやってることは変わらないじゃん、って」
 
 山元さんが担当していたのは寄付や会費。いくら集めるかの目標金額があり、進捗管理され、達成できているかどうか、達成できていなければどうするのか、問い詰められた。
 
「そのときはまだ、ファンドレイジング・ファンドレイザーっていうのを、単なる営業とか資金調達、もっと言えば集金係くらいにしか捉えられていなかったんです。だから、またお金か、と思ったりしていました」
 
 一方で、ビジネスの場では当たり前だと思っていた常識や前提が通用せず、戸惑うこともあった。
 
「たとえば、ビジネスの場では納期が遅れそうなら早めに相談したりするのが当たり前だと思うんですけど、事前相談もなく遅れるとか。そういう、“整っていない”と思うところがいくつもありました」
 
 中でも山元さんを困惑させたのは、ボランティアやインターン生の存在だった。
 
「かものはしに限らずNPOっていうのは、ボランティアさんとか、インターン生のような方たちが組織の中にいて、活動を支えてくださっています。だけど、企業の中にはふつう、そうした無償人材っていないんですよね。そうなると、どう接していいのかわからないんですよ」
 
 前職の経営コンサルティングファームでは部下を持ち、チームを率いた経験も持つ山元さんだったが、そこでは指揮命令系統がはっきりしていた。その関係性を担保していたのは、究極的には給与ということになる。
 
「ところが、NPOには関わり方が多様な人たちがいて、その人たちとの間にはなんの指揮命令系統もないんです。給与をもらっていないということになると、どこまで仕事を頼んでいいのかもわからないし、お金や役職以外の力の論理でコミュニケーションをとらなければ、そうした人々に動いてもらうことも活かすこともできない。最初は困惑しました」
 
 寄付集めも、やはりビジネスの常識が通用せず、苦戦した。ビジネスの世界では、お金というのは、商品やサービスを提供した対価として受け取る報酬だ。より多くの報酬を得るためには、より優れた商品やサービスを生み出すことを考えればいいということになる。だが、NPOに対する寄付は報酬とは違う。
 
「ビジネスしかしてこなかった身ですから、寄付してくれる人の気持ちがわかりませんでした。その人自身に対して、少なくとも目に見えるかたちではなにも提供していないのに、数百万寄付してくれたりするわけです。その寄付額をさらに上げようと思っても、なにをしたらこの人たちが喜んで寄付額を上げてくれるのか、まったくわからない。寄付する側のロジックもわからないし、マーケティングしようにもやり方がわからない」
 
 ビジネスとNPO、それぞれの現場の違いにカルチャーショックを受け、困惑することが続く中で、次第にミスも出始めた。
 
「当初自分が思っていた以上に、全然成果を上げられず、貢献できているという感覚が持てなくて、1年目は何回も辞めたいなと思いました。でもほかのメンバーがいろいろサポートしてくれたり、フォローしてくれたりする中で、徐々に自分の強み、組織内で自分が貢献できるポイントが見えて来たので、思い切って配置換えを申し出ました」

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