集めたいのは「お金」じゃなくて「仲間」
かものはしプロジェクトの仲間たちと(写真提供:山元圭太氏)
俺らが稼ぐから、君たちは問題を解決しろ
ファンドレイザーとして、はじめ山元さんは会員事業担当だったが、法人担当に変更してもらった。また、マネジメントをするポジションに置かれたことで、だんだん成功体験が積めるようになっていった。
「前職の経験から、対社長さんのコミュニケーションが得意だったので、こうしたら寄付が獲得できるっていうことがわかってきて、そこから自分の強みも再確認できたし、組織内の既存のメンバーとの信頼関係もできて、1年目の終わり頃から、少しずつ状況は好転していきました」
ファンドレイジングがおもしろくなってきたのは、この頃からだ。成果が上げられるようになった達成感ももちろんあるが、それ以上に大きいのは、素晴らしい寄付者との出会いだった。
「いまでも印象に残っている寄付者の方が2名いらっしゃるんです。ひとりは60代の男性で、講演会をきっかけに寄付をしてくださるようになりました」
地方で中小企業を経営している男性で、その寄付額は数百万円。後日、お礼と寄付金の使途についての報告のため男性を尋ねると、お礼を言いに行った山元さんが、逆にお礼を言われたのだという。
「その男性は、子どもの問題に関心を持ち、心を痛めてきたものの、それまではどこに寄付したらいいのか、自分になにができるのかわからず、なにもできなかったそうなんです。だけど、僕の話を聞いて、かものはしプロジェクトに託せば、この痛みは消えるんじゃないか、報われるんじゃないかと思ったから、寄付というかたちで託したんだと。そして『自分の寄付をちゃんと使ってくれたようで、心の痛みが晴れた。そういう機会をくれてありがとう』と言ってくださいました」
山元さんは嬉しそうに続ける。男性からのエールはいまも山元さんを励まし続けている。
「さらに、『自分は商売しかやってこなかったし、お金を稼ぐことしかできない。君たちは、お金を稼ぐことは難しいかもしれないけれど、現地で子どもたちを救うことはできる。だから、これは社会的な役割分担だと思っている。俺らが稼ぐから、君たちは問題を解決しろ』とも言ってくださいました。いまでも継続して支援してくださっていて、会うたびに元気をもらえる方です」
もうひとりは80代の女性で、こちらも地方に住んでいる方だった。夫を亡くし、その遺産の一部を寄付したいということで、甥の方の紹介でかものはしプロジェクトが寄付先に選ばれた。
「お礼と報告に伺ったのですが、報告が終わると、座っていた床に手をついて、おでこが床につくほど頭を下げて、『ほんとうにありがとうね』って、言ってくださったんです」
「意味のあるかたちで、こんなふうにお金を使ってくれて、ほんとうにありがとう」――そのことばに、山元さんは胸がいっぱいになったと言う。
「お礼を言うのはこちらのほうなのに、すごく丁寧にお礼を言ってくださる。そのくらい、なにかを感じてくださっていたり、受け取ってくださっているんだなって。寄付してくれた人もハッピーになって、僕らもハッピーになって、その結果として現地の子どもたちは救われていく。すごくいい仕事なんだなって、嬉しくなりました」
そうした実感を得て、山元さんはファンドレイジング、ファンドレイザーという仕事が好きになっていった。同時に自身がかつてそうであったように、ファンドレイジングという仕事が、表面的にしか捉えられていないことを残念に感じるようになった。
「ファンドレイザーというのは、本質的には単なるお金集めをする人たちではないんです。お金集めのプロではなくて、一緒にその問題を解決したい、ミッションを達成したいという仲間集めのプロが、プロのファンドレイザーだと捉えています。集めたいのは、お金じゃなくて仲間なんです」
以来、かものはしプロジェクトでは、「フレンドレイジング」ということばが使われている。