市民活動を支える地域のお金の流れをつくりたい

京都地域創造基金 理事長 深尾昌峰

_HP_2135

寄付をしない理由は「頼まれたことがないから」
 
 そもそも、なぜ地域の中で市民活動に資金が流れないのだろうか。よく言われるのは、「日本には寄付文化がない」ということだ。
 
「京都地域創造基金をつくるときに、『そんなことをやっても無駄だ、日本には寄付文化がないんだから』ということを、相当言われました。だけど、まずは実情を調べるしかないと思って、京都府に提出されたすべてのNPO法人の財務諸表をコピーして、寄付額をぜんぶ足してみたんです。そうすると、だいたい6億円でした」
 
 当時、京都府にはNPOがおよそ1,000団体存在していた。ということは、1団体あたりの寄付額は、60万円くらいということになる。
 
「ところが、寄付額の多い順に並べ替えてみると、1,000団体中、上位100団体で、4億円を集めていることがわかりました。つまり、寄付が集まらない、日本には寄付文化がない、と言われている中で、ちゃんと集めているところは集めているということなんです。要は、寄付が『集まらない』んじゃなくて、『集めていない』んじゃないかということに気づいたんです」
 
 一般市民側に「なぜ寄付をしないのか」という調査をすると、いちばん多かった答えは、「頼まれたことがない」だった。2番目は「寄付するお金がない」。「なにに使われるかわからない」という答えも3番目に多かった。
 
「頼んでいないなら、きちんと頼まなければいけないだろうと。また、『なにに使われているかわからない』という答えも3番目に来ていましたが、これもどうにかしなければいけないと思いました。実際、NPOを騙って詐欺を働く団体も残念ながらかなりいて、これは僕らの社会からするとかなり深刻な問題です」
 
 当初、深尾さんはそうした団体のブラックリストをつくろうと考えた。だが、名前を変えられてしまえば意味がなく、そうした団体を捕捉するのは現実的に不可能だった。
 
「そこで、発想を逆転させて、ホワイトリストをつくることにしたんです。きちんと情報開示をして、第三者認証の仕組みをつくって、安心して寄付できる団体のリストをつくろうと。きょうとNPOセンターで、『きょうえん』という、各団体の情報開示度を評価するポータルサイトをつくりました」
 
 当初は「忙しいのになんでこんなことをしなければいけないんだ」と不満を漏らす団体もあったが、いまではほとんどの団体が積極的に参加している。
 
「『きょうえん』では、NPOの評価に3つのステップを設けています。ステップ1では、情報開示に対する姿勢を評価する。実際には『きょうえん』に登録するとステップ1はクリアということになります」
 
 ステップ2は、きょうとNPOセンターの事務局による確認・認証だ。団体により公表された内容と実際の組織状況に齟齬がないかを確認する。
 
「ステップ3では、訪問調査やヒヤリング、第三者審査委員会による審査を設けています。そうやって3つのステップを設けて情報を開示していくと、どういうことが起こったか。資源が集まり始めたんです。どこに寄付したらいいかわからないと思っていた企業や人が、このサイトの情報を頼りに寄付先を決めていただけるようになったんですね」
 
 たとえば、あるカイロメーカーは、春先になると、余った商品を活用してくれる団体を探しているが、寄付した商品を横流しされる危険性があるため、提供先には非常に慎重だ。
 
「そうしたときに、『きょうえん』のようなサイトがあると、コミュニティの中での信頼関係が見えますから、『みなさんで分けて活用してください』というかたちで提供しやすい。お菓子メーカーさんから、『子ども向けのNPOでこのお菓子を分けてください』といったかたちの寄付をいただくこともあります」
 
 こうして地域社会で顔の見える関係性の中で認証し合い、相互に信用を創り出していくような仕組みとして、「きょうえん」は運用されている。

関連記事