市民活動を支える地域のお金の流れをつくりたい
発達すればするほど市民性を失うNPOへの危機感
京都地域創造基金立ち上げの背景のひとつには、深尾さんがNPOについて感じていた危機感があった。
「活動を展開していく中で、制度、仕組みに回収されてしまっているNPOが多い。厳しい言葉で言うと、NPOの持つ市民性が収奪されているのではないかと感じたんです」
「NPOが制度、仕組みに回収される」とは、どういうことだろうか。たとえば、NPOには福祉・介護系の分野に属するものが多い。彼らは、介護保険と自立支援法による保険事業の担い手となる。それはつまり、保険事業という制度にぶら下がっている事業体ということだ。
「いま、地域公共政策というものは、アウトソーシングがひとつの基軸になっています。その結果、『協働』の名のもとに、どんどん置き換え型の事業が行われています。つまり、これまで行政がやってきたものを市民と協働するというかたちで、企業、あるいはNPOが行政の事業を下請けするという構図になっているんです」
行政の下請けとして行う事業は、税金を用いたものとなるため、そこには当然一定のルールが敷かれる。
「その結果、組織や事業の同質化という現象が起こってきます。そうすると、NPOという制度、仕組みが発達すればするほど、NPOに関する制度論が発達すればするほど、本来持っていた先駆性や自立性といった市民性が回収されてしまうんです」
だが、現場のNPOからすると、生き残るためにしかたがない面もあるのだということも、深尾さんはわかっている。行政の下請けとなる毒性を認識しつつも、自分たちが取り組んだ方が効果が出るということを信じて、事業を取りに行く。そのうちに、その毒性に慣れてしまって、いつしかそれが当たり前になってしまうということが、いま起こっている現象だ。