ビジネスを通じて一緒に夢を実現したい
「援助」に対する違和感
バングラデシュへは、外務省のODAモニターとして訪れた。
「その頃はバングラデシュへのツアーなんてなかったんですが、ダメ元でODAモニターに応募してみたら、運よく通って行かせていただけた。そこでは国がしている援助を見ることができたんです」
何億円という巨額の費用を投じて橋を建造する裏で、その辺りにもともと住んでいた人々は、内陸へ押しやられて仕事を失っているといった現実も目の当たりにした。
「フィリピンでは下から、バングラデシュでは上からの取り組みを見ることができたんですが、自分の中で“援助”というものに対する疑問がものすごく湧いてきたんです。フィリピンに戻って子どもたちに会えば会うほど、この子たちのエネルギーや可能性をどうしてもっと生かさないんだろうって」
フィリピンの小学校の入学率は9割。学費は無料だが、交通費が払えなかったり、ノートが買えなかったりして通えなくなる子どもも多く、小学校を卒業できるのは6割程度しかいない。さらに、大学は学費がかかるため、貧困層から大学に進める人となると、100人にひとりいるかいないか。そうした環境では、貧困の連鎖から抜け出すことは非常に難しい。だが、孤児院の大学生と話をすると、そのモチベーションの高さや優秀さに驚かされた。みな一般的な日本の大学生とは比べものにならないくらい、本気で勉強に取り組んでいた。
「なのに、彼らがごはんを食べさせてもらう、寄付で学校に行かせてもらう、といった“援助”の対象として見られてしまうことに、苛立ちのようなものを感じたんです。彼らには、自分で自分の人生を切り拓く力もあるし、生まれた環境に関係なく自分がほんとうにやりたい未来を選択していく力があるということを証明したいという思いが強くなっていきました」