住民の、住民による、住民のためのまちづくりをめざして
写真提供:桜ライン311
市内外で見える景色を共有する
桜の植樹に参加するボランティアは、いまは関東圏の人が圧倒的に多い。
「植樹会をやるときはフェイスブック、ツイッター、ホームページなどで告知するんですが、300人の定員が2日間でいっぱいになったりします。市外から来てくれる方って、だいたいが震災直後に陸前高田でボランティアされた方なんですよね」
岡本さんら地元の人たちにとって、桜ライン311は現時点やはり慰霊の思いが強い。だが、外から来た人の目には、違ったかたちに映っているようだ。
「被災地が悲しみから立ち上がって、前を向いて進もうという想いを桜の植樹で表しているんだと、そういうふうに見えているようなんです。緊急支援から一歩進んだ、未来に向かった活動にコミットできると受け止めてもらえている。だから、参加者にとって満足度の高い活動になっているんじゃないかと、僕は分析しています」
未来に向かった目標があること。自分が手をかけた活動の成長や答えが目に見えるかたちで表れること。そういう意味で、震災直後にボランティアとして訪れた経験のある参加者ほど、とても前向きな気持ちになれるのだろう。
「自分が残した足跡がこの街の財産になっていくんだって考えると、すごく晴れやかな気持ちになれるはずです。ただ、地元の人たちにとっては追悼や慰霊の気持ちが強い活動なので、外の人たちの思う未来に対する希望とは、ギャップがとても大きいんです」
まだ将来の町づくりを考えるような状況には至っていないという思いが、地元の人たちには未だにある。
「だから、『まだ終わっていない』っていう感覚を持つことももちろん大切なんだけど、まちづくりを一緒にやろうと来てくれたNPOなどの人たちに対して、彼らをちゃんと受け入れて、お互いの望むかたちを提案していかないといけないと思うんです」
地元を一度離れた人間だからこそできることがあるのではないか。この場面でも、その思いが生かされる。
「ひとつの事実って、いろんな側面がありますよね。市内と人たちが見ている事実と、市外の人たちが見ている事実は、同じように思えても見ている側面が違う。だからうまく回転させて、お互いに見える景色を共有してみたりする。そうやって、一緒にがんばろうっていう雰囲気をつくっていければ、復興はすごく早く進むと思うんです」
SAVE TAKATAで支援者と避難所をつないだように、人と人をつなぐコーディネートの仕事は、かたちを変えながらもまだまだ必要とされている。