住民の、住民による、住民のためのまちづくりをめざして
写真提供:桜ライン311
「市民の総意」をつくり出せ
桜の植樹には、法律の壁も立ちふさがる。たとえば、現在の河川法では堤防に植樹することは原則として認められない。そこで、戸羽市長からかけられた言葉がある。
「『市民の総意として、桜ラインを市の財産にしていこうという意識が広がったときには、俺は認めてもらえるようにするよ。法律のために市があるんじゃなくて、住民のためのものだから』って、市長に言ってもらったんです」
活動を展開する中で、時には高いハードルにも遭遇する。市長の言葉は、心強い援軍を得たようなものだった。
「だから、そういう雰囲気を君はつくれ、って。市をあげての要請となれば、県や国だって、無下にはしにくいでしょうから」
どんなに的を射て素晴らしい政策でも、周りから望まれるものでなければ人もお金も集まりはしない。逆もまたしかりだ。微妙な問題をはらんでいたとしても、多くの人の賛同を集めた計画であれば、かたちになりやすい。
「外の人に支援していただくだけじゃなくて、住民の方々にいかにしてプロジェクトに参加してもらうか。いかに市民の総意として、桜ラインを実現させたいという雰囲気をつくり出せるか。それによって、県のコミットも国のコミットも、全然違ってくるだろうと思うんです」
福島県でも、ハッピーロードネットというNPOが、浜通り163kmを桜並木とするための活動「ふくしま浜街道・桜プロジェクト」を展開している。こちらは平成14年から活動を展開する中で震災に遭ったかたちだが、震災をバネに、一層盛り上がっているという。
「昔からあるっていう安定感と信頼度もあって、もう2,000本くらい植樹されています。先日理事長にお会いしたときには、東京オリンピックで5月くらいに福島県を走る予定の聖火ランナーに、桜の並木道を通ってもらいたいと仰ってました。そういう明確なビジョンがあると、素直にいいなと思えるし、賛同を集めやすいですよね」
「オリンピックがあるから、福島も東北も大丈夫。全国の人はそう思っているようだけど、現実は全然そうじゃない」。そんな思いを福島の人はとても強く持っているとも言っていたという。だが、期待と諦めを織り交ぜながらも、福島の人がいいな、うれしいなと思えるビジョンを描くことで人々の心をつかみ、新しいまちづくりに向けて前進しているのだ。