祭りで被災地に元気を取り戻したい
大船渡復興・東北三大祭り実行委員長 甘竹勝郎氏
大船渡から復興を盛り上げたい
ただ盛り上がるだけではなく、お祭りは思わぬ副産物をもたらしていた。
「あれだけの人出だったのに、事故やトラブルもなかったし、翌朝ゴミがほとんど落ちていなかったことにはびっくりしました。『こんなに気持ちのいいお祭りはない』って、わざわざ電話もいただきましたよ」
陰で支えてくれたのは、ボランティアの方々だった。震災直後から支援活動にあたっているNPO愛知ネット、後援を引き受けてくれたトヨタ自動車とパナソニックのボランティアチーム、それに大学生や地元の商店街の方々。みな誘導や警備、駐車場係など、なにかと力を尽くしてくれたという。
「沿道の草取りまでしてくれましてね。そんなところまでしてくれなくてもいいですよ、って言ったんだけど、『きれいなところでお客様をお迎えしたいじゃないですか』って。すごく手本になったし、なかなかできないことですよね」
元気を取り戻すだけではなく、ボランティアで訪れてくれる人たちからも気づきを得る。願っているのは、復興に勢いをつけ、新しいまちづくりのかたちを見せ、ほかの被災地にも復興の波が広がっていくことだ。
「同じ気仙地域のなかで陸前高田があれだけ厳しい状況だから、大船渡が頑張らなくちゃいけない。歴史を振り返ってみても、大船渡市がこのあたりの兄貴分でした。新しい知恵を入れて、力をつけて、復興を引っ張っていくんだと、やっぱり兄貴はそういう気持ちでないとね」
被災した人々を元気づけようとはじめられた「大船渡復興・東北三大祭り」。今年もまた準備がはじまっている。
「最初は、1,2回でやめようかとも思っていたんですよ。経費もかかるし、準備もいろいろ大変だし。だけど、『来年も楽しみにしてるよ』と言われると、その方々に元気をいただいて3回目まできて、規模も一番大きくなった。ここまで来たら、4回、5回で終わろうだなんて、もう思っていません。できる限り、これからもずっと続けていきたいと思います」
次はいったいどんなお祭りがやってくるのか。誰もが秋を楽しみにしている。
甘竹勝郎*1943年、盛町生まれ。1996年から2012年まで4期16年にわたって大船渡市長を務める。2011年より「大船渡復興・東北三大祭り」実行委員長。
【取材・構成】熊谷 哲(PHP総研)
【写真】shu tokonami